コントロールできなくなるほどギャンブルにはまる、ギャンブル依存症です。当事者が語る症状とは?ギャンブル依存症をめぐる支援と対策の現状です。

 仙台市に住むAさん、75歳。18年前からギャンブル依存症の治療を続けています。
 Aさん「やりたくなかったら多分行かないと思うんですけれども、やりたくてしょうがないんですね」

 ギャンブルにはまったきっかけは、職場の同僚から「パチンコで大もうけした」という話を聞いたことでした。それからほとんど毎日パチンコに通いました。給料や貯金を使い果たし、借金をするように。その額は700万円。返済できなくなり自己破産しました。仕事を失い、妻とは離婚。
 Aさん「サラ金の借金してるお金が(口座に)入ってくると、それを貯金だと勘違いしてるところがあって、平気で(口座から)下ろしてた」

 賭け事をやめたいのにやめられなくなる、ギャンブル依存症。食べ物を食べた時においしいと感じる部分と同じ、報酬系と呼ばれる脳の神経回路の異常で起こる精神疾患です。
 2020年に行われた国の実態調査では、ギャンブル依存症と疑われる人は18歳から74歳の約2.2パーセント、196万人に上るとの推計が出ています。

 しかし、依存症治療の第一人者である石川達医師は、ギャンブル依存症は当事者の性格の問題にされ、治療にたどりついていない現状があると指摘します。
 東北会病院石川達理事長「当事者も『俺は意思が弱いんだ』。家族も説教する時は『お前はなんでそんなに意思が弱いんだ』って話になっちゃうわけです。依存症になっちゃう人はそういう意味では過剰に自立を図っちゃって、そして頑張りすぎちゃって潰れていったみたいな人たちですから。自ら相談室あるいは保健所に行って『困ってます』ということはほとんど無い」

 症状を改善させるためには、専門医の治療が必要です。アルコール依存症も抱えていたAさん。入院して初めて、ギャンブル依存症ということを知りました。
 Aさん「知らなかったですね。ギャンブルに依存症があるんだっていうのは(東北会病院に)入院した時に初めて聞いて」

 ギャンブル依存症から立ち直らせるためには、自分のギャンブル経験を正直に語れる場や孤立させない取り組みが重要です。
 民間団体が山梨県に2015年に開所した回復施設では、回復プログラムの一環として患者が特産の芋の収穫や観光スポットの草刈りなど地元への貢献活動に参加しています。住民との交流を通し、孤立を防ぐのが狙いです。これまでに延べ275人が参加。63人が回復プログラムを終了し、社会へと戻っていきました。約7割は山梨県内の企業に就職していると言います。
 東北会病院石川達理事長「(当事者には)他人から見捨てられんじゃないかなっていうような対人恐怖というんですが、そういうのが多かれ少なかれあるんですね。だからそういった孤立させないことがとても大事になってきます」

 ギャンブル依存症の患者の支援には、民間団体の役割が大きいのが現状です。こうした中、宮城県がギャンブル依存症対策に向けて動き出しています。
 「全国ギャンブル依存症家族の会 宮城」が開いたセミナーを初めて県が後援しました。セミナーに参加したのは当事者やその家族ら約150人。主催者の想定を上回り、満席となりました。セミナーでは石川医師のほか、支援団体の代表を務め自らもギャンブル依存症だった田中紀子さんが講演しました。
 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子代表「借金してまでやってしまうことがなかなか理解できないっていうことも、まだ今の社会はそんな状況だとは思うんですけれども、そういう病気なんだっていうこと」

 参加者からも切実な声が上がりました。
 40代男性「社会人になってからギャンブルにはまってしまって、いろんなものを取りこぼしてきてしまいまして。今の自分が認められないという状況でして、何とか勇気を出してもう一度復職したいなと思ってるんですけれども」

 田中代表は、行政には当事者が早い段階で相談できる環境を整えてほしいと訴えています。
 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子代表「(借金が)1000万を超えているとか、もしくは犯罪にまで手を染めてしまったという状況でやっと相談に来る状況なんですね。ですから、もっと早く相談につながれるように啓発を促してほしいなと思ってます」

 ギャンブル依存症をめぐっては新たな問題も。コロナ禍で普及したオンラインで参加できるカジノなどの相談件数が、コロナ禍前の5倍以上に急増しています。10代や20代の若い人からの相談もあると言います。
 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子代表「今オンラインではまっている人たち、スマホが無ければ社会生活を送れなくなってしまいますので、常に目にしてしまう。若い人たちがあっという間に依存症になってしまっている」

 対策が急がれるギャンブル依存症。宮城県は、2023年度中に相談態勢や啓発活動の強化などを盛り込んだギャンブル依存症対策基本計画を策定する予定です。
 県精神保健推進室橋本崇室長「特にギャンブルですと、まだ宮城県としてはスタートラインに立つところでございますので、しっかり関係する方たちと相談しながら対応をしていきたいなと考えています」

 ギャンブル依存症に関する問い合わせは、仙台市精神保健福祉総合センターや宮城県精神保健福祉センター、各保健所で受け付けています。