東北新幹線は17日、回送列車の補助電源装置の半導体が損傷し5時間以上運転を見合わせました。26日にJR東日本の高岡崇東北本部長が会見し、半導体が損傷した原因の解明には時間がかかるとの認識を示しました。

 JR東日本高岡崇東北本部長「再発防止、安全レベルの一段の向上に向けて全社を挙げて取り組んでいる中で、このような事象が発生していることを誠に申し訳なく思う」

 17日、栃木県の宇都宮駅と那須塩原駅の間で回送運転中の山形新幹線の新型車両E8系が加速できなくなる車両故障が発生し、5時間半にわたって運転を見合わせました。

 同じE8系でこの日に起きた故障は、他に3件ありました。

 この故障についてJR東日本は25日、モーターの冷却や空調設備などに使う補助電源装置内の半導体の損傷が原因と発表しました。

 半導体が損傷した原因は分かっておらず、山形新幹線の直通列車の運転再開のめどは立っていません。

 高岡東北本部長は、原因解明には時間がかかるとの認識を示しました。

 JR東日本高岡崇東北本部長「部品の点数も多いので、1つ1つ点検していくには時間もかかり、複雑な作業になってくるので時間を要してしまうのが現状」

 故障の原因について、鉄道工学が専門で日本大学の綱島均特任教授はトラブルが起きた日の気温の高さを可能性の1つに挙げています。

 日本大学綱島均特任教授「温度が6月にしては異常な高温になっていたということが、1つ要因としてはあると思うんですね」

 綱島特任教授は、故障した半導体は本来高温にも耐えられる設計になっているとして、製造段階で既に不良があった可能性があると指摘しています。

 日本大学綱島均特任教授「同時期に半導体素子が壊れてしまったと。こういう状況は多分これまで聞いたことが無いので非常にまれな現象で。その製品のロット自体が不良であったという可能性が1つ考えられます。でもないと、同じ日に同じ部品が複数壊れるという可能性としては非常に考えにくいですよね」

 この運休は多くに人に影響しましたが、東北新幹線をめぐってはこの1年半ほどの間にトラブルが相次いでいます。

 2024年1月23日には、東京−大宮間で停電が発生しました。架線を張るための重りの破損が原因でした。

 2024年3月6日には、郡山駅で停止位置を約500メートル通り過ぎてしまうオーバーランが発生し運休になりました。3月29日にはまたしても停電し、その4日後には保守点検用の車両が油漏れを起こし、レールについた油を人力で拭き取りました。

 そして2024年9月、はやぶさとこまちの連結が走行中に外れるという前代未聞のトラブルが発生しました。

 2024年11月と2025年2月には、パンタグラフの異常が立て続けに発生しました。3月には再び走行中に連結が外れるトラブルが起き、そして今回の新型車両のトラブルです。

 日本大学綱島均特任教授「運用が非常に複雑ということと車両の種別が非常に多いということは、他の新幹線と比べてかなり大変な部分ではあると思いますね」

 綱島特任教授によると、東北新幹線は車両の種類がE2系からE8系まで5つあって全国で最も多く、他の新幹線よりもトラブルが起きやすいと指摘します。

 加えて、山形新幹線や秋田新幹線と連結して運転している点もトラブルが起きやすい要因としています。

 日本大学綱島均特任教授「福島駅で分離してつばさは山形方面に行きますし、盛岡駅で分離して秋田新幹線、秋田の方に行くと。東京に行く時は、その逆のオペレーションをやるわけで、非常に運用が複雑ですよね。従って1つのトラブルがあっても非常に問題が色々な所に波及する可能性は高いので」

 更に人材不足で保守点検に対応できる人手が減っている可能性があると指摘していて、AI技術の導入を強化するなど少ない人で対応できるような体制にしていかないといけないと話しています。