サッカー場などを整備するスマートスポーツパーク構想の是非を主な争点に行われた宮城県の大郷町長選挙で、構想の見直しを訴えて初当選した石川良彦町長に、今後のスポーツパーク構想について聞きました。
大郷町のスポーツパーク構想は、2019年の台風19号で被災した粕川地区の農地にサッカー場12面や宿泊施設を整備する構想です。前の田中学町長が交流人口の増加や定住者の確保を目指す一大プロジェクトとして、強力に進めようとしました。
田中学町長(当時)「何もしないでこのまま現状維持ではいずれ衰退することは間違いございません」
しかし、町議会では採算が取れないのではないかという懸念や、計画の3倍以上の9億円近くにまで膨らんだ事業費などへの疑問から、反対の声が高まりました。
町議会議員「きょう資料を出されてきょう精査しろなんてそんな話無いでしょ」「この事業もう少し時間をかけてやるべきかと思うんですが」
議会は2度にわたり関連議案を否決し、町民の意見も賛成と反対に二分されました。
「わたしは賛成です。町の活性化の起爆剤にでもなればいいんですけどね」「あんまり賛成ではない。スーパーとかがあってほしいんですよ(スポーツ)パークよりは」
こうした中で行われた8月の大郷町長選挙では、構想を推進する現職の田中学氏と構想の見直しを掲げた前の議長、石川良彦氏の一騎打ちとなりました。
田中学氏「この事業は、まちづくりの目的ではございません。手段であります。これをやらなければ大郷町のあすの夜明けはない」
石川良彦氏「しっかりと具体的な計画あるいは企業としての採算性、そして町としてもこのことが町のために本当になるのか」
選挙戦の結果、スポーツパーク構想の見直しを掲げた石川氏が、500票余りの差で初当選を果たしました。
石川良彦氏「(スポーツパーク構想について)地権者や町民に広く声を聞きながら判断をしてまいりたいと考えています」
大郷町長選挙で初当選を果たした石川町長は、スポーツパーク構想について見直しをするものの白紙にするつもりは無いと話します。
石川良彦町長「サッカー場12面にするより、もっと効果的な使い方に切り替えた方が良いという声が多いのは間違いない。ゼロに戻すとなると色々な問題が出てくると思う」
石川町長は、町が3年前に打ち出したスポーツパーク構想を議長の立場から見てきましたが、不透明な部分が多いと感じていたと言います。
石川良彦町長「疑念というかもうちょっと詳しい説明があってしかるべき。本当に実現できるのか心配、不安のもとで否決してきたと思う」
更に、年間の利用者数や事業としての採算性についても見込みが甘いと指摘します。
石川良彦町長「交流人口、年間71万人と言っていますけど1日2000人が果たしてこの地域にきていただける可能性が本当にあるんですかと。365日×2000人ですよ。(賃借料)570万円だけしか町に入ってこなくていいんでしょうかという疑問は町民、議会からも強いです」
その上で、町と運営を担う企業のスポーツXが情報を包み隠さずに開示し、町民と率直に話し合うことが大事だと強調します。
石川良彦町長「同じ土俵、テーブルで話をしていくしかない、共通認識でやっていく。大郷町で1億円と言ったら相当な金額なので、分からない事が次々出てきているから」
現在の構想ではサッカーが主体となっていますが、他のスポーツも選択肢に入れるべきだと考えています。
石川良彦町長「多目的グラウンドなどを望んでいる方が結構いる。サッカー場12面よりは、多目的グラウンドなどもプラスして総合運動場以外にアスレチックで遊ぶ場所を併設し、それだけの面積があるのでそういうので人を呼び込む」
今回の町長選挙ではスポーツパーク構想ばかりが争点として取り上げられましたが、町民の日々の生活を充実させるよう取り組んでいきたいと話します。
石川良彦町長「財政状況を考えると大きな夢は描けないので、日々の生活で困っている事や望んでいた事が先送りになっていた部分、ここが私に対する期待。スマートスポーツパーク構想はあるけどもそれだけじゃない」