化粧品会社で働いていた女性が自殺した原因が社長のパワハラだと遺族が訴えた裁判で、東京地裁は調停の結果、会社側が謝罪して1億5000万円を支払い、社長が辞任する決定が出されました。

 遺族や代理人弁護士によりますと、化粧品会社「ディー・アップ」の新入社員として働いていた里実さんは2022年、うつ病の診断を受けて休職し、その後、自殺を図って25歳で亡くなりました。

 里実さんは2021年にディー・アップに入社し、営業部に配属されました。

 会社では上司に大声で悪口を言われるなど周囲との人間関係に悩み社長との面談を行いましたが、社長は里実さん以外の従業員の話を前提に話を進めたうえ、「大人をなめるな」などと叱責(しっせき)したということです。

 里実さんの自殺を受けて里実さんの両親はおととし、自殺の原因は社長のパワハラだとして東京地裁に裁判を起こしていました。

 また、去年5月には労働基準監督署が里実さんのうつ病発症の原因が社長の言動にあること、うつ病と自殺に因果関係があるとして労災認定をしました。

 こうしたなか、今年5月にディー・アップ社側から社長の謝罪を含む和解の提案があり、裁判は調停の手続きに移行しました。

 今月9日に東京地裁は社長らによる謝罪、社長の辞任、調停金1億5000万円の支払いなどとする決定を出しました。

 ディー・アップ社は会社のホームページで「亡くなられた元従業員とご遺族に対し、衷心よりおわび申し上げます」と謝罪文を掲載し、坂井満氏の社長退任を発表したうえで、「新体制のもと、透明性と信頼性の高い経営を一層、推進する」としています。

 里実さんの姉は会見で「生きている間に社長に謝ってほしかったです」と話しました。