子どもたちに美術館に興味を持ってもらうため、行われているユニークなイベントがある。その名も「ぬいぐるみお泊り会」だ。

■ぬいぐるみが美術館に一泊し作品鑑賞?

 東京・千代田区にある、東京国立近代美術館。その館内を移動する台車には、無数のぬいぐるみが乗せられていた。

 そして、ぬいぐるみたちは絵画の前に1体、1体並べられていく。それだけではない。彫像の前だったり…眺めがいい場所にも、ぬいぐるみたちが置かれていた。

 先月、行われたイベントで、その名も「ぬいぐるみお泊り会」。子どもたちが大切にしているぬいぐるみが、美術館に宿泊。作品を鑑賞したり、館内で過ごしたりすることで、子どもたちが美術館やアートに親しんでもらうための取り組みだ。

 そして、撮影された写真がアルバムとなり、自分のぬいぐるみが代理として泊っている写真を見ることで、子どもたちは美術館を身近に感じるという。

東京国立近代美術館 成相肇さん 「もともとは主にアメリカですけれど、図書館にぬいぐるみがやってきて撮影を行うイベントはやっていました。これは美術館でも割とやりやすいイベントだなと思ったのがきっかけです」

 アメリカが発祥だというぬいぐるみのお泊り会。海外では多くの図書館が行う、定番のイベントだという。

 今回、東京国立近代美術館が行った「ぬいぐるみのお泊り会」には、およそ1000件の応募があり、その中から20組のぬいぐるみが選ばれた。

 そして、ぬいぐるみを並べるスタッフにもこだわりが…。それは、ぬいぐるみが美術鑑賞をしているように見せること。しかし…。

スタッフ 「どうしても首が上を向かないのが…難しいね」

 相手は自分で動けないぬいぐるみ。どうしても下を向いてしまうことも…。他のぬいぐるみの力も借りて、なんとかスタンバイ完了。

 子どもたちは、一体、どんな思いで参加しているのか?

■ぬいぐるみを預けた中学生「新しい思い出を」

 東京都に住む、中学2年生の陽道くん(13)。今回のイベントにぬいぐるみを預けた。1歳の時から一緒にいるという犬のぬいぐるみの「けんちゃん」。

「一人で家で待つ時とか一緒にいて、心強くなれる存在みたいな感じです」

 旅行に行く際に陽道くんが不安にならないよう、お母さんが買い与えたのが「けんちゃん」だった。

陽道くんのお母さん 「ジュースとか水を飲む時に一緒にストローをさして飲んだりとか。生きている存在のような感覚で捉えていたことが印象的でした」

 しかし、中学生になり、塾や部活動などで忙しくなった陽道くん。「けんちゃん」と一緒にいる時間は、ほとんどなくなってしまった。

「このころ、部活とか学校の宿題で暇な時間が少なくて、美術館に行って、新しい思い出を作られたらいいな」

 寂しい思いをさせている「けんちゃん」に「美術館を楽しんでほしい」そんな思いで、「お泊り会」に参加したという。

 そして、届いたフォトブック。「けんちゃん」はどんな様子で、美術館を楽しんでいたのか…。

 セザンヌの絵画を、仲良くなった仲間と共に鑑賞する「けんちゃん」。本当に楽しそうだ。

「この写真集に写っていない絵とか企画展とかも(けんちゃんと)一緒に行ってみたいと思う」

(「ワイド!スクランブル サタデー」2025年9月13日放送分より)