衝撃の見た目をしているクロアナゴという魚は、水揚げされても加工しにくいなどの理由で捨てられていて未利用魚と呼ばれています。こうした海の資源を大切に使うため、khb東日本放送と高校生が新商品の開発に挑戦しました。

 様々な種類の魚が水揚げされ、飛ぶように売れていく石巻魚市場ではせっかく取れたのに、ただ同然で売られている魚があることをご存じでしょうか。
 石巻魚市場佐々木茂樹社長「アブラギスっていう魚で本当に商品価値も無く鮮度も落ちてしまうので、かなり底にいる魚ですので1キロ20円とかですね。ムギサバ、サバ(の幼魚)も小さくてどうしても値段が付かない」

 サイズが規格外であったり、見た目が悪かったりなどの理由で値が付かないのです。特に、価値が無くて捨てられてしまう魚は未利用魚と呼ばれ、有効に使うことが課題となっています。
 そこで、khbと南三陸高校の生徒がタッグを組んで、プロジェクトが動き出しました。
 鈴木奏斗アナウンサー「みんなと一緒に未利用魚を使って、新しい商品を作りたいなと思って集まってもらいました」

 未利用魚を少しでも減らし、おいしく有効活用しようと商品開発に挑戦します。用意したクロアナゴは、沿岸部の海底付近に生息する比較的大型のアナゴです。寿司ネタで有名なマアナゴよりもはるかに大きく、1メートルを越えるモンスター級の大きさになることもあります。宮城県南三陸町では、特産のタコ漁の仕掛けに入り込む厄介者として知られています。

 鈴木奏斗アナウンサー「見てどうですか?」生徒「おいしそうではない!」
 早速、移動してクロアナゴを試食すると。
 生徒「うわ本当だ臭いが。結構臭いが」「魚苦手な人は多分苦手なんじゃないかな。味が薄い気がします」「超白身魚」

未利用魚で商品開発

 生徒たちが気になったのは、クロアナゴ特有の生臭さとたんぱくな身です。これが未利用魚として扱われる理由の1つです。そこで、様々な調味料と混ぜ合わせてみることにしました。
 生徒「何入れたの?」「オリーブオイルと山椒とか。風味を追加して臭みをごまかす感じ」「フライドオニオンとパフ大豆入れて、絶対においしいと思う」「食感おもろい」「合うのはご飯じゃないですか、一番は」

 試行錯誤の末、クロアナゴをフレーク状に加工してご飯のお供を開発することになりました。プロジェクトをサポートしてくれる食品卸大手、国分東北の佐藤さんに高校生が主体となる今回の商品開発について聞きました。
 国分東北佐藤悟さん「我々大人は未利用魚を有効活用しなければという認識はあるが、高校生が入ることで違った目線の開発もできるし、高校生も南三陸町をもっと好きになってくれるんじゃないか」

 試作品を手に向かったのは、南三陸町で水産加工品を手掛けるカネタです。地域の課題を一緒に解決したいと、商品化に全面協力してくれました。
 伊藤芽衣さん「知る人ぞ知る伝説のクロアナゴラー油です。こだわったポイントは、辛みを入れる時に唐辛子だけではなくコクを出したいなと思ったので豆板醤を入れています」

 生徒たちが提案したのは、ごま油に唐辛子を加えたピリ辛ラー油です。商品開発のプロ、佐藤さんの評価は。
 商品開発佐藤明日香さん「あ、豆板醤の香りがしっかりしています。ご飯が進む味ですね。おいしいです」

 味が決まったところで、クロアナゴの下処理を見学します。漁業者に敬遠される最大の理由が判明しました。
 生徒「(骨が)硬いし思ったより大きい。これ全部骨ここら辺まで。でかくない?」「やっぱりこの体のサイズなので骨が硬い。それプラス小骨も大量に付いている。やっぱり家庭では嫌われがち。すごく手間が掛かりますので」

未利用魚を下処理

 骨の処理が難しいため、市場で扱われず捨てられていました。そこで、水産加工のプロはクロアナゴを巨大な加熱器の中へ。120℃で1時間、圧力をかけながらじっくり加熱すると。
 生徒「おおおー!おいしそうじゃない?このままこういきたい」
 小骨までホロホロにやわらかくなります。そして、フレーク状にしたクロアナゴに豆板醤や唐辛子などを混ぜ込み、フライドオニオンでコクと旨みをプラスします。

 仕上げに、ごま油などを合わせた特製オイルを注げば高校生のアイデアから生まれた、南三陸産旨辛アナゴラー油の完成です。
 生徒「ピリ辛だ!」「フライドオニオンの香りと味が辛さと絶妙にあっておいしい。臭みとか全く無くて食べやすい」「お豆腐に乗っけても絶対おいしい」「そうめんに入れたら合うかも」「おいしすぎて止まらないんだけど」
 みんな大満足の味に仕上がったようです。

大満足の味に

 生徒「商品化してみんなが食べていくことによって、未利用魚という存在が広がっていったらいい」「未利用魚でもおいしさを伝えられれば、未利用魚に価値が付いてきて取る理由になってくると思うので、今回の活動で力になれたのは良かった」
 27日と28日に、仙台市太白区あすと長町杜の広場公園で開催するkhb開局50周年記念あすとつながるぐりりパークで販売します。

 会場では更に、子どもたちがおいしい魚を自分でつかまえる大人気のイベントも開催されます。前年大盛況だったギンザケつかみどりです。
 制限時間内に捕まえられたら、ギンザケ1匹をプレゼント。捕まえられなくても切り身がもらえます。
 水しぶきを上げて子どもたちが大はしゃぎできる楽しいイベントです。事前の申し込みが必要でkhbのホームページからご応募ください。なお、当日の受付も若干数ですがご用意しています。