宮城県と仙台市が、1月13日から宿泊税を課税を始めます。課税開始が迫る中、宿泊事業者の現状と行政で検討されている使い道です。
豊かな自然に恵まれ、四季折々の美しい景観が楽しめる観光スポットや数多くの温泉地を有する宮城県は、ホテルなどへの宿泊者が年間900万人以上に上ります。
観光客が更にに楽しめる環境整備を行おうと導入される宿泊税は、素泊まり6000円以上で1人300円を課税します。仙台市の宿泊の場合は仙台市分が200円、県分が100円となります。修学旅行や部活動での宿泊、保育園などでの活動については課税は免除されます。
観光客やビジネス客などが利用する仙台市宮城野区にある丘のホテルでは、宿泊税の周知を始めています。
丘のホテル梅原敏社長「現在フロントで1月からスタートする宿泊税のご案内をさせていただいています」
課税開始まであと1カ月ほどに迫る中、丘のホテルでは領収書に宿泊税の項目を追加するための準備などに追われています。
丘のホテル梅原敏社長「まさに今、レジシステムの改修に向けてシステム会社と打ち合わせをして進めている最中ですが、やはり費用がかかってしまいますので仙台市の方での補助金で対応したいなと考えているんですけども、補助金の申請、その辺りを今はやっているような状況です」
宿泊税の導入をめぐっては、事業者から利用者が減りかねないといった反対意見が相次ぎましたが、2024年10月に宮城県議会と仙台市議会でそれぞれ条例案が可決されました。
実際の徴税事務は宿泊事業者が担います。梅原社長は、宿泊客から税を徴収する方法について頭を悩ませています。徴収の方法は現金だけでなく、クレジットカードや電子マネーでも可能です。
しかし、クレジットカードなどで徴収した場合、カード会社に支払う手数料は宿泊事業者の負担となります。梅原社長は手数料や宿泊客の手間を考慮すると、どの方法が一番良いか判断することは難しいと話します。
丘のホテル梅原敏社長「宿泊代はカードで宿泊税だけ現金とかですね、そういう二重三重の手間がやはりお客様にとってはかなり手間になってくると思いますので、その辺をやはり各ホテルがどのように対応していくのかは大きな課題だと思っています」
宿泊税の開始に向けて準備や検討を進めていますが、実際に始まるまではどのような影響が出るかは読めないと感じています。
丘のホテル梅原敏社長「今回宿泊税、我々初めての経験でして色々なことを想定は頭の中ではしているが、実際現場ではどんなことが起こるのかが始まってみないと分からないということがありまして、スタートしてみて色々やりくりしないといけないのかなと思ってます」
一方、宮城県と仙台市合わせて年に約20億円余りと見込まれる宿泊税の税収の使い道について、議論が進んでいます。
仙台市は、太白区の秋保大滝周辺エリアの魅力向上を目指そうと、滝見台やスロープの整備を検討していて2026年度中の完成を目指しています。
郡仙台市長「実際に宿泊事業者を含めた観光関連事業の皆様方にもご議論をいただきまして、使途についても色々お話をいただいているところでございます。その中で、秋保大滝の滝見台について造っていこうということで、まず充てさせていただこうと思っております」
宮城県は11月、宿泊事業者や有識者が宿泊税の使い道について議論する会議を開催し、施策案を示しました。「戦略的な観光地域づくり」「周遊性向上のための二次交通対策」「快適な旅行環境のための受け入れ環境整備」「効果的なプロモーションの展開」が4つの柱となっています。
具体的には、宿泊につながるナイトタイムコンテンツの充実や観光地を周遊する交通手段の確保、観光案内ガイドの育成、SNSなどを活用したデジタルプロモーションの推進などが盛り込まれました。
観光振興政策に詳しい専門家は、行政には宿泊税の使い方を明確に説明することが求められるとした上で観光客や宿泊事業者だけではなく、地域住民にとってもメリットがあることが重要と指摘します。
JTB総合研究所山下真輝さん「観光自体が地域の人たちの協力によって成り立っているところがありますので、観光事業者だけにメリットがあるということになりますと、やはりなかなか観光振興全般にご協力いただけなくなりますので。やはり住民も意識するということは大事」
2020年から宿泊税を導入している福岡市では、税を活用して観光やビジネス利用の多い地下鉄の駅にエレベーターやエスカレーターを増設したということです。
JTB総合研究所山下真輝さん「宿泊客のお困りごとに加えて、地元の方のお困りごとも同時に解決していく施策をやっていまして、そこをしっかり何に使っているかということを分かりやすく発信するということによって理解を更に得られる」