約150匹の猫が暮らす宮城県石巻市の田代島で、猫たちを診療するためドイツから通う獣医師です。長年にわたって診療を続けています。
石巻市の沖合に浮かぶ小さな島、田代島は島民43人に対し約150匹の猫が暮らす猫の島です。海外からの多くの観光客でにぎわいます。自然の中で猫たちが自由気ままにくつろぎ穏やかな時間が流れる田代島にドイツ在住の獣医師、クレス聖美さんが通い続けています。
田代島を訪れるのは今回で5カ月ぶり約70回目、クレスさんは友人の獣医師を含む5人の医療チームで島を訪れました。
猫たちはいつも声を掛けてくれるクレスさんの顔を覚えているようです。島に住む多くの猫は、いくつかの場所に集まって生活し島民が餌やトイレを管理しています。
田代食堂も、常に20匹以上が集まる猫スポットの1つです。
田代食堂店主松木雅子さん「クレスさんは田代島の神様ですね。ボランティアでドイツから来るんですよ。すごいなって思ってますね」
島で暮らす猫たちは寒さにより体調を崩しがちで、潮風を浴びた身体をなめて塩分を過剰に摂取するため腎臓の病気にかかりやすいということです。寿命は10年ほどと、室内で飼われる猫に比べて短命です。
クレスさんたちは主に、病気やけがの治療にワクチン接種のほか必要に応じて去勢手術も行います。
長年の経験をもってしても、猫たちの気分は思い通りにはならないようです。
「こっちの目が白くなってる。猫風邪でずっと残っちゃうと、こんな風になっちゃう猫が。目やにもちょっと出てる、目薬取ってくるね」
自分がいない間も島の人々が猫たちの健康を守れるよう、コツを伝えながら診療します。
田代食堂店主松木雅子さん「目薬のほかに塗り薬があることを初めて知りました。ゼリー状だから塗りやすいとは言ってましたね。オーラある方ですね、素晴らしいです。安心しました」
猫たちに負担を掛けないためにも、短時間で処置を済ませることが大切です。ワクチン接種は一瞬です。
クレスさんがボランティアで診療を始めたきっかけは、15年前の東日本大震災でした。
クレス聖美さん「震災当時、ドイツでも何日も報道されていて、非常にショックを受け何かできないかと思った」
猫の島として有名な田代島の様子が気になっていたところ、SNSで猫の安否情報を発信している人とつながり2011年8月から田代島で診療を始めました。
クレス聖美さん「やっぱり最初は風邪ひき、ぐじゅぐじゅ、特に冬はすごく状態の悪い子が多かったんですけど」
診療を始めてからは2カ月毎に島を訪れ、7年から8年経った頃には治療の効果が目に見えて感じられるようになったと言います。
クレス聖美さん「観光客の方がSNSに田代島行ったら港の猫みんなきれい、なんてだんだんそういうのが出てきて効果が出てきたんだなって感じで、それはとてもうれしく思ってます」
クレスさんが田代島で会うのは猫だけではありません。
クレス聖美さん「あけましておめでとうございます。お元気ですか?」
田代島は、島民43人のうち36人が65歳以上と高齢化が進んでいます。クレスさんは猫の診療の傍ら、1人暮らしの住民を訪問して近況を聞きながら寄り添う時間も大切にしています。
クレス聖美さん「ここで1人でいても大丈夫?お元気そうで良かった」
島民「先生が来てくれてうれしいですよ、話もできるし。結構人も減ってるから、若い人がいない」
今では島民からの信頼も厚いクレスさんですが、診療を始めた当初はなかなか受け入れてもらえなかったということです。
クレス聖美さん「歩いて診療してると、何やってんだ、そんなことしたって猫は捕まえられやしないとか言ってすごい怖かった。でも年中行くもんだから、また来てるって感じで。それでだんだん本気なんだなって思ってくださったと思う。猫が好きなのでそれに尽きるっていうか、義務感だったら絶対続かないと思うので」
田代島を訪れるようになってから15年が経過し、ほとんどの猫が健康に過ごせるようになった今、活動に終わりはあるのでしょうか。
クレス聖美さん「毎回それについて皆でも考えてるんですけど、来ると猫大好き人間なんでそれでなかなか決められないですね、実は分からないっていうのが正直なところです。とにかく猫たちがね、短命といえども楽しい猫生をここで謳歌出来たらなっていうのが目標かな」