日本酒の醸造技術をベースにして造るクラフト酒という新しいタイプのお酒で起業した、老舗酒蔵出身の若手社長の挑戦です。
グラスに注ぐと、きめ細かな無数の炭酸が立ち上がります。一見するとスパークリングワインのようですが、日本酒の伝統的な醸造技術をベースに造られた日本ならではのお酒です。
クラフト酒の磊眞(らいじん)という銘柄は、仙台市の老舗茶舗の和紅茶を使うことでやわらかな甘みが引き立つということです。
関謙次記者「日本酒の感じがあまりしないというか、ほんのり炭酸が利いています。リンゴのようなフルーティーな香りが、まず広がります」
宮城県大崎市古川の浅勘酒造店は、宮城県の酒造組合には加盟していませんが1919年(大正18年)の創業から100年以上、脈々と地酒を造り続けてきました。歴史ある酒蔵で2025年11月からクラフト酒の磊眞が造られています。
磊眞をプロデュースした伊澤平輝さんが、作業を見守ります。磊眞は浅勘酒造店で製造されますが、販売は伊澤さんが社長を務める仙台市の秋保ハートロックサケという会社が手掛けています。
秋保ハートロックサケは2025年に設立したばかりで自社の蔵を持っていないため、伊澤さんが浅勘酒造店の社長にお願いして設備を借りています。
お酒の前段階となる液体の醪(もろみ)が入っているタンクに、冷凍した茶葉が投入されます。磊眞では、発酵の最初の段階でこうした副原材料を加えるということです。
そもそも日本酒とクラフト酒の違いとは?
伊澤平輝さん「日本酒は米と米麹と水しか使ってはいけないという決まりがありまして、ホップですとかお茶、果物を入れることでその他の醸造酒というお酒になります。それがクラフト酒と呼ばれています」
米以外の物が加えられることで、クラフト酒は酒税法上の分類が日本酒ではなくなり日本酒とはまた違った魅力が生まれるということです。
伊澤平輝さん「副原材料と酵母の相互作用によって、新しい香味が生まれることが特長だと思います。フルーティーな日本酒よりもはるかにフルーティーで果実味を感じる味わいとなっておりまして」
3月、伊澤さんが手がけたクラフト酒が認められる出来事が早速起こります。香港で開催された日本酒の販売イベントに参加したところ、磊眞の2つの味が販売本数で1位と2位と独占しました。全国から21の酒蔵が参加し、約110銘柄もの日本酒やクラフト酒が提供された中での快挙でした。
伊澤平輝さん「低アルコールで非常に飲みやすいところと、これまでの日本酒にないくらい華やかな香りだというところが評価されました。日本酒ではなかなかない氷で割っても飲めるお酒というところも評価された1つだと思います」
いきなり結果を出した伊澤さんですが、新規に酒造業界に参入したわけではなく実家は仙台市で江戸時代から続いてきた老舗の酒蔵です。
伊澤平輝さん「これまで私たち日本酒をずっと造ってきておりまして、日本酒そのものに非常に誇りはあるんですけれども日本酒の消費量自体は年々下がってきておりまして、もっと米で醸したお酒の美しさとかおいしさを、若い人を含む色々な方に知っていただきたいと思って新しくブランドを立ち上げました」
日本酒はもっと自由でもいいのでは、という思いもあったということです。今後は仙台市の誇る景勝地、太白区秋保に会社移して蔵を構えたいと話します。
伊澤平輝さん「秋保には観光名所でもあります磊々峡がありまして、自然にできたハート型の石がございます。それがラベルの目印になっています」
磊眞という銘柄にも磊々峡の一文字を使い、秋保のお酒であることをアピールしました。
ただ、新しいタイプの酒を広めたい気持ちの根底にあるのは、やはり伝統的な日本酒を守りたい思いです。
伊澤平輝さん「奇をてらったりとか話題性を求めてやっているのではなくて、あくまで日本酒の技術とかおいしさをベースに副原材料のバランスを大事にしたお酒を造っています。将来は日本酒も造りも挑戦したいと思っていまして。もし将来的に清酒の製造免許が手に入れば、清酒の方も色々造っていきたいと思っています」
その先に思い描くのは、地域の他の酒造り拠点と連携して仙台市を訪れる人を増やすという構想です。
伊澤平輝さん「将来的には秋保に自社拠点を構えまして、そこでお酒を造っていきたいと思います。秋保にはワイナリーとかクラフトビールもありますし、あと少し行けばウイスキー工場もあるので、そこに日本酒が加わることでその地を巡る楽しみが増えていけばいいなと思っております」