東京電力福島第一原発の事故の後に普及した太陽光発電のパネルが2030年以降、寿命を迎えることから大量廃棄の問題が懸念されています。課題を解決する糸口にしようと、使用済みパネルのガラスを再び資源にすることで、新たな価値を生み出すプロジェクトが始まっています。

 1200℃を越える窯の中から溶かしたガラスを取り出し手際よく形を整える。仙台市太白区秋保町の工房でガラス作品を制作する村山耕二さんはこれまで、仙台市を流れる広瀬川や山形県の月山の砂を使った器など、自然の素材を生かしたユニークな作品を生み出してきました。

 太陽光パネルが大量に廃棄されるいわゆる2030年問題について、村山さんは40年以上にわたりガラス作品を作り続けてきたからこそ強い関心がありました。
 海馬ガラス工房村山耕二代表「ずっとガラスに携わって素材の開発もずっとしてきましたので、ガラスが社会の問題になっていくということは看過できない、何か寂しいなこれをどうにかできないかという思いはずっとありました」

 国が原発事故の後、太陽光などで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取る制度を導入した結果、太陽光発電はエネルギー全体の約10%にまで急増しました。しかし、太陽光パネルの寿命は20年から30年で、震災後に設置されたものは2030年以降役割を終えて大量に廃棄されます。

 政府は、廃棄量を最大で年間80万トンと試算していて、特にパネルの約6割を構成するガラスは処理コストが高く、リサイクルが難しいということです。課題の解決に向け、地域のブランディングを手掛ける企業が核となり3月に太陽光パネルアップサイクルプロジェクトが始まりました。

 村山さんのほか、太陽光パネルを設置するハウスメーカーやリサイクル業者など、宮城県の企業が業種を越えてプロジェクトに参加していて、第1弾がDay light Glass プロジェクトです。廃パネルのガラスを太陽光で光る照明器具に生まれ変わらせ、新たな価値を生み出そうという試みです。

 この日、村山さんたちはデザイナーを交えて製品のコンセプトや完成イメージについて話し合いました。リーダーの早坂さんは、プロジェクトを通じて廃パネル問題の現実を知ってもらう一方で、その未来を前向きに捉えてほしいと考えています。
 プロジェクトリーダー早坂正年さん「電気を生み出した後、どう生まれ変わるのか。それをできる限り美しく、最後は多分泥臭く幅広く。最初はその太陽光パネルが美しくアップサイクルされるイメージを消費者に持っていただきたい」

 プロジェクトに参加する仙台市青葉区の宮城衛生環境公社は、40年以上にわたり廃棄物処理に取り組んできました。強い風圧で直径1ミリほどの小さな鉄球をパネルに当てて、ガラスとシートを分離しています。こうした技術の活用などリサイクルへの取り組みが評価され、2024年に国から北日本エリアで初の環境先進企業として認定されました。
 宮城衛生環境公社渡邊博康専務「原材料として見えていない太陽光パネルが製品化されると、見ることも触れることもできるという点に魅力を感じて参画をさせてもらいました」

 宮城県川崎町の丹野林業建設もプロジェクトに参加しています。2024年から処理設備を導入し、廃パネルをリサイクルしています。
 工程は、パネルに付いた汚れを拭き取った後、アルミ製のフレームを専用の機械で外します。パネルを砕いてガラスと発電シートを分離し異物をふるいに掛けて、ガラスを純度別に分けていきます。
 長年太陽光パネルを設置するための伐採を請け負ってきたからこそ、廃パネルの資源化に貢献したいと考えています。
 丹野林業建設丹野浩三さん「20年近くになると必ず廃棄される。廃棄後はどう処理されるかとなった時にリサイクル機械があるということで、これならいい状態で処理できるとなり機械を導入して今に至っている」

 こうして処理したガラスを照明器具として生まれ変わらせるDay light Glass プロジェクトの製品が照明ということは、被災地宮城県ならではの理由がありました。
 プロジェクトリーダー早坂正年さん「宮城県からもう1回、太陽光パネルのその後の行き先を考えていこうという時に、キーワードとして防災というのはありました。LEDで太陽光で光りますから、電気が来ない時でも一時的にしのぐ道具になるということで、防災にも活用できるプロダクトというのは今考えています」

 村山さんはガラス作家として、今回の試みをきっかけに廃パネルのガラスが持つ素材としての可能性を多くの人に知ってもらいたいと考えています。
 海馬ガラス工房村山耕二代表「ガラスを作るために有効な物がだんだん少なくなっていった場合に、廃パネルのガラスは貴重になってくる。今あるガラスのストックを、原料として再利用できる時が来るのではないか。今から体制を構築していけば貯金のようなものですけども、それができたら何か1つのガラスに対して貢献ができたのかなと考えています」