相次ぐ水の事故から命を守るため今年、各地の海水浴場ではデジタル技術を使った試みが行われています。
弾けるような笑顔で水しぶきを上げながら遊ぶ子どもたち。今年も海水浴場は活気に満ちていました。
しかし、その陰で毎年くり返される悲しい事故があります。
8月10日、新潟市の海水浴場で遊んでいた親子3人が沖に流され、中学生の姉と小学生の弟が死亡するという痛ましい事故が起きました。
去年の7月から8月だけで全国では水難事故が446件起きていて、241人が行方不明、または亡くなっています。
こうした水難事故や事故につながる恐れがある「砂浜での迷子」の対策に「デジタル技術」が活用されています。
■「海の新常識」デジタル“お守り”
去年の夏、およそ178万人が訪れた神奈川県藤沢市の海水浴場です。こちらの海水浴場では、全国で初めて無償で「GPS発信機付きライフジャケット」の貸し出しを始めました。
相模原市から来た人(子ども2人) 「あ、本当だ!簡単に出ます!こういうのがあると、遠くからでも安心してみていられる」
江の島海水浴場協同組合 栗原義忠理事長 「山登りに使うものですが、海水浴場でやってみるのはどうかと」
搭載されているのは小型のGPS端末です。山岳遭難救助で実績を持つベンチャー企業が開発した技術を、海へと応用しました。
栗原義忠理事長 「水難事故が起こった時とか、もしくは子どもがいなくなった時の初動が確実に早くなると思う」
海は陸上と違い目印がなく、流されてしまうと発見までに時間が掛かります。しかし、GPSを身に着けていると万が一の際、スマートフォンや専用の受信機で位置情報を素早く特定することができます。
家族7人で海水浴に来ていた女性は…。
川崎市から来た女性(子ども5人) 「急に勝手にパーって走ってどっか行っちゃったりとか。特にこの子はすぐどこかへ行ってしまうので、ちょっと不安なところがある。GPSがついているだけで安心感はありますね」
一方、静岡県下田市の海水浴場では、水難事故につながるリスクのある「迷子」の対策として、今年から新たな取り組みが行われています。
男の子が買ったカプセルトイに入っていたのは、黄色いリストバンドです。
リストバンドには、近い距離で使える通信無線と2次元コードが搭載されています。事前に保護者がスマートフォンを使って子どもの名前や保護者の電話番号などの情報を登録しておきます。
もし、子どもが迷子になったとしても、ライフセーバーなど周囲の大人が2次元コードを読み取るだけで、保護者へ居場所を知らせるメッセージが届く仕組みです。
試験的に始まったこの取り組みは、迷子が見つかってから保護者へ引き渡すまでの時間を短縮する狙いがあるといいます。
スウェル合同会社 山口智史代表 「(迷子は)多い年でシーズン通して20件強あって、混雑している時に集中して5~6件起きてしまうこともある。(迷子対応が)1件1件が長引いてしまうと、ライフセーバーの他の事案に対応する業務の圧迫にもつながってくるので、そこを解消できないかというところから、迷子を保護した後(保護者との)再会を早くするコンセプトで作った」
電池や専用のアプリは一切不要、防水仕様で海にそのまま入れ、半永久的に繰り返し使えます。
山口智史さん 「『お守り』くらいの感じで買ってもらいたい」
海の安全をデジタル技術で守る試みが活発化しています。
放送や大人の見守りといった「これまでの安全対策」と、デジタルという「新しいお守り」を掛け合わせたハイブリッドな備えが、これからの「海の安全」を支える鍵になりそうです。