仙台空港からの定期便が復活した韓国の観光についてです。身近な旅先の韓国ですが、日本からの観光客の数はコロナ前の水準に戻っていません。韓国が観光客回復へ向けて力を入れるのは、定番のグルメや買い物にとどまらない新たな魅力の発信でした。

 山下裕志記者「韓国の仁川空港に到着しました。仙台からの便は、KーPOPの流行の影響からか若い女性の姿も目立ちました」
 韓国の今を知ろうと、仙台の韓国総領事館が東北のメディア向けに企画したツアーに参加しました。早速訪ねたのは、定番グルメが並ぶこちら。日本からの観光客も目につきます。
 東京都から「ショッピングとカフェが主な理由で、コロナが明けて3年ぶりくらいに、今回はずっと念願の韓国に来ました」「ずーっと来たくて」

 行列に並び、人気のドーナツを買った女性は。
 福岡県から「いただきます。おいしいです」「TikTokで韓国のブームが来ていて、韓国アイドルの話とか韓国のファッションとか美容とかがイメージとしてあって、行きたいなというのが1つ」

 コロナ前に悪化していた日韓関係は、韓国の政権が代わり改善しています。
 神奈川県から「SNSで日本人のインスタグラマーとかだけじゃなくて、現地の韓国人のアカウントもよくチェックしています。お店の人とかタクシーの運転手さんとかみんな優しくてホッとしています」

 コロナ禍を経て、日韓の交流は活気づいています。仙台空港では4月、3年ぶりに定期便が復活しました。10月以降は、週3往復から4往復へ拡大する予定です。
 ショッピング街の明洞で出会った韓国の男性は、10月に福岡県を訪ねる予定です。
 韓国人男性「日本の横丁や居酒屋が好き。食べ物がおいしいと思います。」
 別の韓国の女性も。
 韓国人女性「東京に行くとディズニーランド、大阪はUSJ。北は温泉が有名だし、冬は雪まつりも。」

コロナ前の7割

 一方、5月から7月に日本に来た韓国人の数は、コロナ前の9割以上に回復しているのに対し韓国を訪れた日本の観光客は7割にとどまります。
 韓国旅行会社ガイド「明洞の街は、コロナ前と比べると盛り上がりはまだ復帰していません。コロナ禍以前は、今より倍、3倍の多い人出、人混みだった。もっと日本人に来てほしい。いっぱい、いっぱいいらっしゃるのを楽しみにしています」

 そこで韓国は、グルメなどの定番にとどまらない幅広い魅力を発信しています。その1つが、2022年にオープンしたソウル市中心部の施設ハイカグラウンドです。若者向けの音楽やアートなど、韓国文化を伝える空間です。
 目玉は、韓国アイドルのミュージックビデオのような世界を再現した5つのスペースです。観光客はこの空間で、アイドルになりきって踊る様子を撮影できます。

 空の玄関口、仁川空港の近くには、6年前にオープンしたパラダイスシティがありす。館内にはアート作品が並び、ホテルのほかスパや遊園地を併設しています。
 山下裕志記者「仁川にあるパラダイスシティにあるのが、日本にはないカジノです」

新たな魅力を発信

 日本でも、大阪が開業をめざす統合型リゾートです。24時間営業のカジノは外国人専用でルーレットやスロット、バカラなどを楽しめて、大金を賭ける専用の部屋もあります。
 パラダイスシティ ペク・カンフン課長「カジノがメインのホテルですので、外国人の割合が7割でその中で日本のお客さんが6割ぐらい。韓国といえば明洞というが、最近は韓国で色々な新しい所があるので、2泊、3泊していただきながら色々な施設を楽しんでいただければと」

 ただ、日本からの旅行のネックとなるのが円安です。専門家は、海外旅行が割高になっていると指摘します。日本人の海外旅行の伸び悩みは、インバウンドに沸く日本の観光の今後にも水を差しかねません。
 七十七リサーチ&コンサルティング田口庸友首席エコノミスト「直行便が片道だけ乗せて帰りの便に乗らないと、搭乗率に影響し便の維持そのものができなくなってしまう。インバウンドにとっては痛手になる。教育旅行、研修旅行で海外に行くのを支援するなど、インバウンドの政策一辺倒なので、異次元のアウトバウンド政策も必要なんじゃないか。インバウンドとアウトバウンドの両方が、バランスよく増えていくことが望ましい」

 山下裕志記者「現地に来た若い日本人観光客に話を聞くと、韓国のアイドルや美容に
関心を持っているという話が目立ちました。しかし、円安に加えて日本では物価高が進み、海外旅行へ行く金銭的な余裕がなくなっていることなどから、韓国を訪れる日本人はコロナ前に戻っていないということです」「日本で観光というと、いかに外国人に日本を選んでもらうかに注目が集まりがちですが、日本から海外へ行く人がいなければ、
航空路線を維持できません。持続可能な観光を様々な視点から考えていくべきだと感じました」