オンラインゲームやインターネット動画など、デジタルを活用して楽しむ事が当たり前の世の中で、人形劇で子どもたちを楽しませている女性がいます。
子どもたちの笑顔の先にあるのは、人形劇です。演じているのはバオバブ人形劇場を主宰する横田敬子さん(69)です。派手な舞台ではありませんが、子どもたちの心に響いていました。
横田敬子さん「一番は子どもたちに楽しんでもらうこと」
仙台市青葉区にある絵本と木のおもちゃの店、横田やの傍らで何やら作業をしているのは、敬子さんです。
カメラマン「敬子さん今、何をやっているんですか」
横田敬子さん「宮城県に伝わる昔話で「海の果て」という話をパネルシアターで演じたいと思っています」
海の果てを見たいという鳥の志をエビやカメが受け継ぎ、代わりに海の果てを目指すというユニークなあらすじです。普段の人形劇とは違う体験を子どもたちにしてもらうおうと考えていました。
敬子さんが人形劇を始めたのは40年ほど前です。横田やのイベントで絵本の読み聞かせと一緒に行ったことがきっかけでした。当時は人形劇が盛んで、仙台市でもデパートなど街の至る所で公演が行われていたと言います。
横田敬子さん「夢中になって見てくれた(子どもたちの)目が本当に(人形劇を)楽しんでいるんだけど真剣で、そういう反応が面白かった」
敬子さんは気軽に人形劇を楽しんでもらいたいという思いから、月に1回公演をする場を設けました。評判は上々で、この日も会場いっぱいに子どもたちが入り劇が始まるのを待ちます。
真っ暗な中で始まった劇が進み、エビがカメの鼻の穴に入ってしまう場面では。
「俺の鼻の穴に入っている奴は!ひえー!たまげた!」
子どもたちは、舞台に引き込まれていました。
子どもインタ「カメの鼻にエビが入ったのが面白かった」「こっちだけ明るかったから楽しかった。これから工作もあるから楽しみ」
横田敬子さん「これシールなんだけど、君たち作って帰ってくださいね」
敬子さんは、子どもたちに人形劇を教えています。自分で表現する楽しさを感じてほしいからです。
横田敬子さん「作りたい、それを動かしたい演じたい、そういう気持ちをここでは存分に解き放していい。発揮してほしい」
敬子さんが人形劇を続ける理由は、時代の流れに抗うことです。
横田敬子さん「抵抗です。素晴らしい動画やゲームの世界やらあるけど、みんなと力を合わせて何かを作っていくことも素晴らしいということを伝えたい」
敬子さんが親しくしている劇団があります。みやにん人形劇団です。演目はネコのみやにんと芋虫君が仲良くなるというお話です。芋虫君をデザインしたのは敬子さんです。この演目にはせりふは一切ありません。ギターの演奏をバックに、人形の動きだけで物語が進みます。
横田敬子さん「言葉の無い演技が素敵だと思う」
みやにん劇団かすぴよさん「(敬子さんは)イメージを形にできる人。芋虫君も敬子さんが考えて作らなかったら「みやにんのさんぽ」という演目はなかった」
この日、みやにん人形劇団と敬子さんの劇団が共同で公演しました。まずは、みやにん人形劇団の演目です。子どもたちは、人形が演じるユニークな動きに大喜びです。
続いて、敬子さん率いるバオバブ人形劇場の演目は、主人公のネコがヨーグルトを盗み食いして友達のせいにするというお話です。
子どもたちから声が飛びます。
子ども「だめだよだめだよ」ネコ「僕知らない」
子ども「さっき食べていたよ」「正直に」
ネコ「正直に」「ヨーグルトを食べたのは僕です」
主人公は良くない事をしますが、それを悪い事とは決めつけません。
横田敬子さん「食べるためには色々と言い訳をして、何とか自分の思い通りにしていこうとするのが人だよね。そういったことを子どもにも肯定する。そういう気持ちはみんなあるよね。あなたはどうすると投げ掛けている」
インターネット動画など刺激がある物を求める時代ですが、敬子さんはそれだけでは足りない物があると考えています。
横田敬子さんインタ「人が生で伝えていく物が人の心を動かして、育てていくんじゃないかな」
人と人とが顔を合わせて演じる中で、お互いに楽しさや喜びを感じていく。敬子さんは、そうした触れあいを続けていきたいと考えています。