イランに対して直接攻撃に踏み切ったアメリカ・トランプ大統領。戦後80年の今、攻撃に正当性はあるのでしょうか。
■米国“突然の攻撃”なぜ?
上空を飛来してくるのはB2ステルス爆撃機。イランの核施設を攻撃した爆撃機です。
ダン・ケイン統合参謀本部議長 「アメリカ中央軍は『真夜中の鉄槌(てっつい)』作戦を実行し、イランの核施設3カ所に対して計画的かつ精密な攻撃を行った」
アメリカ軍によりますと、B2爆撃機7機はアメリカ本土を出発。空中給油を繰り返しながら1万キロ以上離れたイランまで飛行し、標的を爆撃しました。
また、おとりのため別のB2爆撃機を太平洋方面に飛ばしたといいます。
ダン・ケイン統合参謀本部議長 「これはアメリカ史上、最大のB2爆撃機による作戦攻撃だ。911以降、最も長距離の任務でもある」
アメリカが攻撃したイランの核関連施設はナタンズ、イスファハン、フォルドゥの3カ所です。
ナタンズとイスファハンの施設は潜水艦から巡航ミサイル「トマホーク」で攻撃。そして、地下約80メートルにあるとされるフォルドゥに使用されたのは、B2爆撃機のみが搭載できる約14トンある爆弾「GBU-57」。地中まで貫通できる「バンカーバスター」と呼ばれる爆弾です。
フォルドゥを捉えた衛星画像を見ると、地表にいくつもの穴が開いているのが確認できます。
ヘグセス国防長官 「トランプ大統領が計画した作戦は大胆かつ見事であり、世界にアメリカの抑止力が復活したことを示した。世界は大統領の発言に耳を傾けるべきだ。アメリカ軍は世界最強の軍隊だ」
トランプ政権は、今回の攻撃はイランに核兵器を持たせないためとしていますが、IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長は…。
IAEA グロッシ事務局長 「我々はイランが組織的に核開発に取り組んでいるという証拠は持っていない」
アメリカのギャバード国家情報長官も今年3月、「情報機関はイランが核兵器を製造していないと評価している」と話しています。
■突如の軍事行動 その背景は?
早稲田大学 中林美恵子教授 「トランプ大統領はずっと話し合いでイランの核武装を止める立場。イスラエルがイランを攻撃し様々な重要人物を殺害し、さらにイランの防空能力をも破壊した。軍事的にはもしイスラエルの大きな成果をもとにしてアメリカが加担すれば、最も大きな核施設であるフォルドゥを破壊することができるかもしれない千載一遇のチャンスにトランプ大統領は恵まれた。1期目のトランプ大統領は側近に相当の安全保障や外交のプロがそろっていました。第2期の政権になってからトランプ大統領も1期目の反省から、トランプ大統領の考え方や理念に賛同する人だけを選んでいる。今回もトランプ大統領が決めることに真っ向から反旗を翻す人は政権内にいなかった」
今回の攻撃に正当性はあるのでしょうか。
慶應義塾大学 田中浩一郎教授 「トランプ大統領が何を言っても彼が色んなところでイラク戦争に突入したアメリカの過去の大統領を批判しているが、今回の手順と手続きはどう見てもイラク戦争の時よりひどい」
2002年、アメリカはイラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、戦争に突入しました。しかし、その後イラクで大量破壊兵器が発見されることはありませんでした。
慶應義塾大学 田中浩一郎教授 「イラク戦争の時は国連安保理にパウエル国務長官が当時、話を持っていった。ガセネタだったわけだが、一応、関係国に説明をして軍事攻撃に乗り出すための許可を得ようとしたが、今回はそんなことすらしていない。イスラエルが始めた6月13日の国際法上、問題が多いどころではなく、違法と言える軍事攻撃をアメリカが是認しただけではなく自らがそれに陥ってしまっている」
攻撃について説明したヘグセス国防長官は「体制転換を目指すものではない」と強調しています。
ヘグセス国防長官 「この作戦は体制転換を目指すものではない。イランの人々や部隊を標的にしたものでもない」
ただ、トランプ大統領は、その後のSNSへの投稿で体制転換に言及しています。
トランプ大統領のSNSから 「『体制転換』という言葉は政治的には正しくないのかもしれない。だが現在のイランの体制がメイク・イラン・グレイト・アゲインをできないのであれば、どうして『体制転換』が起こってはいけないんだ?MIGA!」
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