文章を入力するだけでイラストや映像、音楽などを自動で作り出してくれる生成AIは、手軽にクオリティの高い動画や音楽を生み出します。やがてやって来る誰でも表現者になれる時代に、クリエーターたちはどう向き合っているのでしょうか。

 本物としか思えないヒマワリ、人間も血管やしわなど細部までリアルに描写されている生成AIで作られた映像です。生成AIは急速に進化を遂げています。
 GLOBALSTARS代表クリエーティブ・プロデューサーAIJさん「音楽生成AIなんてめちゃくちゃ良いんですよ。何これって、クオリティが良くて。ボーカルもうまいし。私も元々ボーカリストなんですけど、俺いらないわって思いましたもんね一瞬」

生成AIで制作

 生成AIは膨大なデータを学習し、映像や音楽などを自動で作り出します。近年ではクオリティが上がり、「誰でも表現者になれる時代」が確実に近づいています。
 仙台デザイン&テクノロジー専門学校は長年映像クリエイターを養成していて、2024年度から生成AIをカリキュラムに取り入れました。
 仙台デザイン&テクノロジー専門学校渡邉康祐副校長「仕事としての1つチャンスかなというとを見据えたうえで、我々学校の中の授業で取り入れたりしているんですけど、生成AIごとにそれぞれ特徴があって、その特徴を理解して生成AIに的確な指示を出せるかっていう人と、ただ自分の思った通りの文字を打って、それなりのものを作る人で一気に変わってくるかなと思います」

 この日学校では、数ある生成AIのうちMorphicというツールについて理解を深めるための特別講義が行われました。講師には、音楽の制作やプロデュース業などをしながら、生成AIで最先端の映像表現を追及しているAIJさんが招かれました。
 AIJさん「例えばこの、キャラクターを考案するってあるでしょ。これをクリックしてみると、Morphicが勝手にアイデアをくれるの、キャラクターのアイデアをくれるの。ほら、今3パターン来たよね」

専門学校で特別講義

 授業で使っている生成AIのMorphicは、使用者が提示するプロンプトという指示に合わせてコンテンツを生成してくれます。初めて使う学生たちも、簡単にキャラクターを生成することができました。
 AIJさん「AIに触れるきっかけっていうと自分の好奇心かもしれないですけど、4年から5年くらいかな色々と触れるようにして、ニュースも敏感になっていって。やはり時短ですよね。とにかくコスパが良いというか、時間の制約がある中ものすごくスピーディーに作業ができる。本来集中しなきゃいけないことに集中できる世の中になる気がしています」

 一方で、生成AIを取り巻く環境について、課題も残っているといいます。
 AIJさん「問題として著作権や権利処理、著作権の保護という観点がすごく弱いかなと思いますね」

 簡単に模倣できてしまう生成AIだからこそ、著作権のある既存のコンテンツを学習データとして使用することや、生成された作品の権利についてなど、現在も世界中で議論が交わされています。
 AIJさん「進化が早すぎることじゃないですかね。進化が早すぎて人がついていけない」

 学生たちも生成AIを使った動画作りに取り組んでいます。CGクリエーター専攻で3年生の小砂子珠衣さんは、長さ1分の作品を約3カ月かけて制作しました。
 小砂子珠衣さん「140とかめっちゃ生成してて。このシーンだけでも6個くらい生成して、自分が一番良かったというものを使ってます。それぞれ少しずつ違っていて、急に柄が変わったりしてたので前の部分だけ切り取って使ってみたりとか」

学生の作品

 瞬時に映像が作れる生成AIですが、作品として完成させるには人間の目で時間をかけて精査していかなければなりません。
 AIJさん「ディレクションがすごく大事だと思いますね。どの画像が良いか悪いかは判断できないんですよAI。あくまで人間が判断する、いわゆるセンスを養うことが今後すごく必要になってくるんじゃないかな」

 生成AIはあくまでも自分の表現の幅を広げるひとつの手段で、。クリエーターの感性や知識がこれまで以上に大切になってきます。
 小砂子珠衣さん「第一印象は、すごっでした。こんなにあっという間にできちゃうんだっていうのが一番素直な感想。同じプロンプト(指示)の文章を打っても別の動画が出てきたりすることとかもあって、そこも生成AIならではの面白さみたいなところでもあると思うんですけど、自分に無かった発想とかをくれたりするので、今後映像業界でもたくさん使われていくと思うので、偏見が無いことも強みになると思いますし、そこに対しての知識があることも強みになると思うので、そういうところで生かしていけたらいいな」
 AIJさん「(生成AIに)クリエーティブな仕事が取られるんじゃないか、ってよく言われるじゃないですか。その危機感よりも1つでも多く良い作品を作ること、それが音でも映像でもイラストでも漫画でも大事なんじゃないかなと思います」
 仙台デザイン&テクノロジー専門学校渡邉康祐副校長「もともとのクリエーティブできるスキルは学生さん持っているので、もっと生成AIと掛け合わせることで自分のレベルを高くできるか。生成AIを駆使して問題解決していく方たちをプロンプトディレクターって呼ぶ職種もありますし、仙台市のこの学校からいち早く輩出していきたい、そういう人材になってほしいなと思います」