連日ヒグマの捕獲が続いている北海道・砂川市では、けさも罠にかかったクマが。止まらないクマの出没現場を取材しました。

■ヒト襲撃“市街地ヒグマ”緊迫の捜索

きょう28日も、札幌市の市街地では緊迫の事態が。猟銃を身に着けているのは、クマ対策のエキスパート、「ヒグマ防除隊」です。 札幌市西区にある公園。この場所で、近隣住民の男性がヒグマに襲われました。現場は札幌駅から約9キロの住宅街です。親子とみられるヒグマ2頭が目撃されています。 (高橋純暉記者)「男性は犬の散歩で公園に訪れており、すべり台の辺りからトイレへ向かおうとしたところ、前から来たクマに襲われたということです」 おととい26日午後8時すぎ、43歳の男性が犬の散歩をしていると…突然、体長約2メートルのヒグマが襲いかかってきます。男性は右腕にけがをしました。市街地の道路を歩く母グマと子グマの姿が、これまで防犯カメラにとらえられています。最前線で任務にあたる「ヒグマ防除隊」の玉木隊長は―。 (北海道猟友会札幌支部防除隊玉木康雄隊長)「人身の傷害になった時点で確実な問題個体となったので、夜間発砲も視野に入れた捕獲案件となった。子グマを抱えた母グマは子グマを守るための防御反応が大きい。銃を持っている我々でさえ子連れの母グマに出会った時には、ある程度覚悟を決めなくてはいけないほど危険な反応をする」 公園内にあったフンを調査した結果、「エサ不足」の実態が分かってきました。 (札幌市職員)「フンの中身が草が8割。相当、山の中に食べ物がない状況なのが伺える」

■きょうもヒグマ捕獲“大量出没”の街

28日朝5時半、北海道・砂川市のリンゴ園で撮影された映像です。 (北海道猟友会砂川支部池上治男支部長(76))「農園に来ました。箱罠に入っています。1頭ですね。入っています。でかいわ」 「箱わなに入りました。壊すよな、あんた、オリを。入っちゃったね」 こちらのリンゴ園では、数日前に、ヒグマによる食害が発生。ハンターの池上さんに、クマ捕獲の依頼が寄せられました。 「これも足跡だ、これ」 Q.だいたいどれくらいの? 「150キロ近くはあるよね」 至急対策が必要ということで、すぐに箱罠を仕掛けることに―。 「入り口、こっち、入り口、向こう」 今回、エサとして使うのは、リンゴに加えてシカの肉です。 (北海道猟友会砂川支部池上治男支部長(76))「エサとして匂いが蔓延して、リンゴよりもシカ肉に(クマが)食いつく」 まもなくリンゴの収穫時期を迎える農家にとっては死活問題です。 (リンゴ農家)「手塩にかけて最後の仕上げ作業なんです。一気にこの時期、もう一晩でこれだけ悪さされたっていう。何とか(箱罠に)入ってくれることを期待しているんですけども」 砂川市では、線路を横切るクマに―。住宅の前を悠然と歩くクマ。街の中心部でもクマの出没が相次いでいます。 (地元住民)「安心して生活が今のところできないような感じです」 池上さんらが仕掛けた箱罠にも今月17日から3日連続で、ヒグマがかかりました。逃れようと暴れるクマ。 「危ないですね、箱罠自体が壊れる可能性もありますね」 箱罠での捕獲後も、クマの目撃は後を絶ちませんが、砂川市が管理する5つの箱罠のうち、2つはクマに壊され、使えない状態だと言います。 そして、朝の5時半、ハンターの池上さんが、リンゴ園に確認に向かうと。 「箱罠に入っています。一頭ですね。入っています。でかいわ」 「箱罠に入りました。壊すよな、あんた、オリを。オリが小さいので、動きがとりにくいんですね」 池上さんは、リンゴ農園で見つかった痕跡から、近くにもう1頭いる可能性を指摘します。 「これ1頭だけならいいんですけど、もう1頭、2頭いる可能性もあるので、(近くで)1頭、様子を見ている場合もありますね」

■止まらない“秋の全国クマ出没”

今月に入ってからも、全国各地でクマの出没が続いています。 宮城では、住宅の敷地に侵入。飼育していた七面鳥やニワトリなど13羽が食べられました。 岩手では、子グマが道路に出てきて、何かを食べています。林から、もう一頭、子グマが。 「兄弟?」 さらに親グマも―。 「でかい、でかい」 親子でエサを探しているのでしょうか。 秋は、夏以上にクマへの注意が必要な季節です。

■大凶作…市街地でエサ探しクマ増?

クマの生態に詳しい新潟大学の箕口名誉教授です。 (新潟大学箕口秀夫名誉教授)「双眼鏡でブナの枝先を見ると。あるはずなんですが…ないですね。大凶作ですね」 クマの秋の主食はブナの実ですが、今年は全国的に凶作で、さらにミズナラやコナラの実も不作だと言います。 (新潟大学箕口秀夫名誉教授)「一般的には“ナラ枯れ”と言われている、伝染病のような病気なんですけれども、今年はミズナラ、コナラとも不作。ツキノワグマをはじめ、山の動物たちにとってもダブルパンチ」 これは夏に撮影されたクマの様子です。同じ個体が秋になると。明らかに体が大きくなり、お腹の肉が垂れているのがわかります。冬眠中、体脂肪をエネルギーとして使うため、秋のうちに、大量のエサを食べる必要があるのです。 「なんとしてでもエサを取りたい、栄養を取りたいということで、市街地に出て、エサを探すという、そういった集団が出てきてしまうということだと思います」

■“駅近グマ”捕獲後も…また出没

今年の秋も、クマの出没が相次いでいます。 山形県鶴岡市では、市町村長が市街地での猟銃の使用を許可する「緊急銃猟」が全国で初めて判断されました。 (草薙和輝アナウンサー)「山形県の鶴岡市です。駅からほど近い、店舗やホテルなどが立ち並ぶ、このあたりの市街地で20日、クマが目撃されました」 この日は、午前9時55分ごろから、市街地でクマの目撃情報が相次ぎました。午前10時50分ごろに撮影された写真では。中心部の建物前をクマが歩いています。その後、午前11時10分ごろには―。 (草薙和輝アナウンサー)「こちらには、人の出入りが多いスーパーがあるんですが、そのすぐそばの住宅の庭に、クマが入り込んだということです」 これはクマが住宅の庭に侵入した後、正午ごろに撮られた映像です。 (撮影者)「猟友会の人もいる」 (アナウンス)「こちらは鶴岡警察署です。クマ一頭出ています。非常に危険です」 この後、1発の銃声が響いたと言います。 (撮影した人)「人を払ってからするのかなと思ったら、急にドーンって来たので、やっぱり突然のことだったんだろうなって」 住宅の庭では何が起きていたのか。市の職員が描いたイラストをもとに、当時の状況を再現しました。 (「緊急銃猟」に対応した市職員)「(庭に)木があってクマが木に巻き付くような形で寝ておりまして、お尻が見えていた。市の職員が現場についたのが12時くらいなわけですけど、その後もしばらく木の下にいて、12時20分で市長が(緊急銃猟を)許可しますって」 クマの侵入から約1時間10分後、住民に弾丸が到達する恐れがないなどのすべての条件が整い、市長が「緊急銃猟」での発砲を許可。しかし、それを現場に伝えている最中に―。 (「緊急銃猟」に対応した市職員)「現場の職員に電話をしているときに歩き、そこら辺のやりとりの最中に(クマが)歩き出した。そして、ハンターのそばに来ちゃったので、(警察官が)じゃあ撃てと」 結局、「緊急銃猟」では間に合わず、従来通り、現場の警察官の指示で、ハンターが発砲することになったのです。

ただ鶴岡市では、これ以降も― (クリの木が庭にある住民)「きのう、おとといでクリは減っていたので、実際(クマが)食べているところも見ましたし」 クリの実がなっていた枝を落とし、センサーライトを設置するなど、新たな対策をしましたが、クマは再び現れました。 全身真っ黒で暗闇に溶け込んでいますが、よく見ると、頭を下げる時に、開いた口の中が白く映っているのがわかります。木を揺さぶりながら、体を右向きから、左向きへと変える様子も―。体長1メートルはあるようです。 (クリの木が庭にある住民)「まさか自分の家の庭に来ると思っていなかったので、柿の木とか、そちらにあるので、そういうものも狙われるんじゃないかと怖くなりますね」

9月28日『有働Times』より