ネパール人男性が警察署で拘束された後に死亡した事案を巡り、東京高裁は東京都に約3900万円の賠償を命じました。1審判決での賠償額は約100万円で金額を大幅に増やしました。

 シン・アルジュン・バハドゥールさん(当39)は2017年、他人のクレジットカードを所持していた疑いで逮捕された後、新宿警察署で暴れないように手足をベルト型の手錠や足首をつなぐロープで身体を縛られました。

 その後、東京地検での取り調べ中に突然、意識を失い、死亡しました。

 警察署から東京地検に移動するためにベルト手錠を外した際、アルジュンさんの手首から先はうっ血して赤黒く膨張していて、居合わせた警察官は「すごい手しているな、こいつ」と発言したということです。

 アルジュンさんの遺族は拘束について「問題があった」として東京都に損害賠償を求め、裁判を起こしました。

 1審の東京地裁は今年3月、身体を拘束したことに違法性は認めなかったものの、適切な治療を受けさせるべきだったとして都に約100万円の損害賠償を命じましたが、遺族は賠償額が低すぎると控訴していました。

 今月19日の判決で2審の東京高裁は「必要以上の強度でアルジュンさんの身体を拘束するもので、筋肉への血流が著しく阻害された」として、身体拘束と死亡の因果関係を認めたうえで、都に対して1審判決の約40倍の3900万円余りの賠償を命じました。

 判決の後の会見で、アルジュンさんの遺族の弁護団は「男性裁判官が審理でアルジュンさんと同じ器具を使って身体拘束を受ける検証を行ったところ、その場で大きな声で『痛い』と言った。こうした検証が判決につながった」と話したうえで、「ベルト手錠などの戒具の使用は廃止すべきだ」と訴えました。

 警視庁は「判決内容を精査したうえで、今後の対応を検討して参ります」とコメントしています。