【仙台育英 須江航監督 ラストミーティング全文】
「引退」ではない――きょうは終わりではなく始まりだ
2年連続の甲子園出場で、昨年がベスト16、今年がベスト8、〝敗退〟です。進出とは言えないですよね、日本一を目指してきたので、敗退ということで。昨年より1つ上まで勝ち上がりましたが、目標としているところには到達できず、最後の試合は、本来持ってる力が出せず、相手に完敗という形で終わりました。
それを受けて皆さんどう思いますか。高校野球は、夏の大会は終わったんですけど、野球を続けるという子は、卒業するまで当然部活というか、野球があるから、終わりではなくてまた始まり。
木製バットに握り替えて一生懸命練習する子もいれば、準硬式とかで頑張ってやりたいっていう子も当然いるし、勉強の道に進みたいって子もいますが、いずれにしても一区切りで、引退という言葉はあまりふさわしくないんじゃないかなと。皆さんが野球をやめる時、バットやボールを置く時、グローブを置く時に、引退という言葉を使ったほうがいいんじゃないかなって、私は思うんですけど、いかがですか。
きょうここにいるメンバーの皆さんは、3年生が全員来てくれてます。1、2年生は選ばれた子と、サポートしてくれてるメンバーが来てくれてて。今の話からすれば、きょうは終わりではなくて始まりということを、今から伝えていきたいと思います。終わりではありません。始まりです。
夢見て入った仙台育英で待っていたのは〝3季連続の挫折〟
さかのぼってみれば、まず3年生の皆さんは、仙台育英が2022年に東北勢初の優勝、そして翌年決勝で敗れましたが、2年連続の決勝進出ということで、日本の高校野球の中で、仙台育英がとても強い学校で、1番キラキラしている時を中学時代に見てもらって、宮城県、皆さんのご出身の都道府県に、たくさんいい学校がある中で、ここでやりたいということで来てくれました。
悩んで来た人もいれば、もうここ一択、ここに入るのが夢ですというふうに言ってくれた子がほとんどで。きっと、甲子園に行くのは簡単ではないと、皆さん分かってはいるものの、でもきっと行けるんだろうなっていう思いで入ってきたのは間違いないですよね。
甘くないですね。宮城県の学校の皆さんも一生懸命頑張ってますし、東北6県からセンバツに行くっていうのはとても狭き門なので。でも多分きっと、5回チャンスがあるうちの5回、もしくは5回のうちの半分以上は行けるんじゃないかなということで、この仙台育英を選んでもらったと思うんですが、(現3年生は)まず1番最初の夏に甲子園に行けませんでしたよね。覚えてますかね。今野は試合に出ていたので唯一。よく覚えてますよ。あのときの野球ノートに、あなたが書いていたことをよく覚えています。
周りからは、期待とともに、そんなプレーじゃだめだ、そんなんじゃ大したことないぞとか、そういう声を掛けられるけど、絶対に活躍して甲子園に行くんだみたいな内容が、ノートに書いてあって、いよいよ決勝戦で、あと1つ勝ったら夢の甲子園だ、みたいな文章を決勝戦前日に書いてあったのを私はよく覚えてます。
何の疑いもなく、2年前の夏に、絶対に甲子園に行けるんだと。油断や慢心みたいのは正直なかったと思うんですが、しかしながら、(聖和学園に)完敗でした。まさかという風に、みんなが思っていたかもしれないけど、試合内容は完敗で。甲子園に行くのはとても難しいんだなっていうのを学んだのが2024年の夏ですよね。
覚えてますよね。山口(現オリックス)とか、湯浅(現早稲田大学)とか、みんながね、あの時負けると思ってなかった。2時間半前のプレーボールから、試合展開が雲行きが怪しくなって、追いかける展開になり、結局最後届かなかったっていうのを、今野はグラウンドで、みんなはスタンドで見てて、ああ、これが高校野球なんだなっていうのを学んだのが、最初の夏でしたね。とても難しい夏でした。
そして、夏は敗れたからセンバツは行くんだぞというふうに、強く決心して、皆さんも1年生で、1つ上の学年の、佐々木義恭(現駒澤大学)たちと一緒に、このままじゃだめだということで、いろんなことを変えてですね、秋やったじゃないですか。覚えてますか。
あの時間は私にとってとても尊いもので、夏の甲子園に行けなくて、今まで、「別にこれぐらいいいじゃないか」というようなことを全部改めて、もっと厳しく、もっとハードにやるんだぞっていう風に、自信を持って挑んだ東北大会で、またもや敗れて。
あの時に、皆さんや保護者の前で私は、ちょっとこれ以上どういうふうに取り組みを変えたり、これだけ厳しく自分たちでやってきたのに甲子園に行けないっていうのは、この先どういうふうにしていったらいいか、ちょっと分からないみたいな話を正直させてもらいました。覚えてますかね。うなずいてる子が結構いるから覚えてると思う。
監督としてそれが正しいか分からないですけど、それぐらい、義恭たちをはじめ、あなたたちが夏の甲子園に行けなかったところから、センバツには絶対行くんだという強い決意と覚悟を持って、試合に臨んだにもかかわらず、また行けなかった。その時点で、実は3季連続で甲子園に行けていませんでした。
「走塁練習の取り組みが甘かった」――たった一言が空気を変えた
君たちが入学する前の秋も敗れていて、まさか夏の甲子園で2年連続決勝に進出した後の県大会で、早々に敗れるという。つまり3回連続で甲子園に行けないっていう渦中に皆さんがいて、その中でチームが変革していく、変わらなくちゃいけないんだというような日々を送りながら、努力が報われない。果たしてこのまま、監督やチームの方針に従っていて、甲子園に本当に出れるのかなとか、大変不安な時期を過ごしたと思います。その中で思い出してください、去年の夏ですね。チームは春の東北大会で優勝して、今年こそは甲子園に行けるんじゃないかというような空気感がグラウンドの中にちょっと流れているような気がして。
夏の大会にこのまま行ったらまた甲子園に行けないんじゃないかなっていうふうに思っていた時に、練習中にちょっと私が吉川(現王子)に話したの覚えてますか。全員うなずいていますね。今の1年生以外は、よく分かってることだと思うんで。ちょっとしたことです。別に練習をさぼっていたわけでも、何かのルールを破ったわけでもなく、1つ「走塁練習の取り組みが甘かった」というだけの話です。
でも、そのちょっとしたことが、最後の勝敗を分けるっていうことに気づいてもらえないと。今この話さ、今日負けたから響いてると思うんだけど、ちょっとした差じゃん。あと数センチとか、あと1ミリとか、あと0.1秒とか、あの打球が抜けてたら、今野のあの三塁線が抜けてたらとか。
あのボールがストライクになってたらとか、そしたら初回の5失点無かったのにみたいなのは、全部小さい差でしかないし、そのボール半個分、3分の1分のストライクにかかるかかかんないかとか、もうちょっとだけ、低く投げてたら凡退に終わってたとか、その1球、ファウルにしていなかったら、あの6-1の、6ー0の試合がひっくり返っていったとか、そういうのが野球だから。
そんなわけで、去年の夏に吉川の走塁練習に対して、ほんとにそれでいいのかみたいな話をした時に、皆さんが吉川の、そのプレー1つに対して真剣に考えくれて。夏の甲子園に向けて、もう絶対に甲子園に行くんだぞと、抜かれない準備をするんだぞっていうふうに、空気が変わったのをよく覚えています。そして去年の夏ですね。遠かった遠かった。
5回中5回行けると思っていた甲子園に、そのうちの半分も逃してる中で、去年の夏の甲子園には何とか出場して。2つ勝って迎えた3回戦ですね。沖縄尚学さんとの試合です。ここにいる1年生の皆さんも、多分何かしらで見てたり、気にしてたりしてたと思うし、当然2、3年生の皆さんは球場、グラウンドかアルプスにいましたよね。あの試合です。あの試合のことよく覚えていますか。
とても強い相手で、この試合をどう突破していくかっていうね。まさにそのベスト16から8をかけた試合だったんですけど。たぶん大会の山場になるんじゃないかなっていうような試合でした。いい形で先制して、攻めて、リードして逃げ切れるかっていうとこで追いつかれて、タイブレークに突入して、最終的には敗れると。
そのタイブレークで敗れた原因は、別に誰かのワンプレーのせいで敗れたわけではないんですが、チームが1年間、2年間、3年間通して積み重ねてきたことがちょっと及ばなかったんですよね。やってはきたんだけど、この1回とか、この0.1秒とか、この判断とか、もうほんのちょっと、これがもうセーフかアウトかみたいなことが抜けていたり、スクイズが決まっていたらサヨナラだったとか、それぐらいの小さな差が勝敗の差になるってことを改めて学びましたよね。改めて学んだ。全国制覇っていうのは、遠くはないけど、それはそれは簡単ではないんだなっていうことを、去年の敗戦を引き換えに学びました。
「成長したいという心意気での失敗は、何1つマイナスにはならない」
それを踏まえて、これだけ失敗して届かなくて、去年の秋、またまたセンバツに行けずでしたね。何が言いたいかと言うと、今、今日ここで甲子園の試合が終わってお話ししていますが、ほとんどの瞬間負けてきたわけですよ。(3年生たちは)甲子園に2年生の夏には行ったものの、ほとんどの瞬間、敗れてきたわけですね。
そこにとても価値があったんだぞという話をしたいわけです、今。分かりますか。そして今日負けたわけです。つまりは、うまくいくことや成功するということは大変尊いことだし、喜ばしいし、良い思い出にもなるし、達成感も感じますよね。だけど振り返ってみたら、最初から失敗してもいいやと思って失敗することに得られるものなんてないんですが、絶対に成功したいとか、成長したいという心意気や行動で失敗したことというのは、何1つマイナスにはならないわけですよ。すぐ次の機会を得られるときもあります。
つまりその失敗が次の機会の成功につながるという。とてもラッキーでハッピーなことになることもあれば、また失敗、また失敗、また失敗みたいな、失敗が続くみたいなこともあるんですが、でも結局のところ、最後まで諦めないで挑み続けて成功を生むのは、間違いなく失敗したことがあったからなんですよ。これいつも同じ話しているので、なんとなく何を言うのか分かってると思うんですけど、この失敗というのは、成長への機会でしかないんです。成長への機会。
勝って終わりたかったですね、やはり。あれだけ真剣に、1年間、2年間、3年間やってきて、思うような試合展開には全くなりませんでした。ですが、それでも、それも含めて学びしかないってことですよ。だからきょうが終わりじゃなくて始まりだってことです。
学んだということは、これがスタートになったということだから。この敗戦や失敗を糧に頑張ってもらう、とても大きな機会をいただきました。やっぱり繰り返すけど、優勝っていうね、目に見える成果がついたときに、報われたなというふうに思うのも事実です。しかしながら、まだまだ高校生で、まだまだこれから先の人生が豊かになるためにやってるわけだ。
と考えれば、きょうの敗戦は悔しいし、受け入れがたい所はたくさんあるんだけど、でも自分の心持ち、考え方次第では、すごくプラスなことになれるんだというのを学んでほしいなと思うので、そういうふうにきょうの敗戦を捉えてもらいたいです。もう負けちゃったので。負けちゃったらできることはそれしかないんだよ。
一生懸命頑張って努力して失敗したり、負けちゃったら次できることは、その敗戦や失敗、うまくいかなかったことをプラスに変えることだけなので、すぐそこに切り替わってほしいなってとても強く思います。もうそれしかできない。
だから、きょうは終わってみて自分の部屋に、ホテルの部屋に戻ってみれば、あの時ああすれば良かったなとかっていうふうに、思うこともたくさんあるかもしれないけど、目をつむって寝る瞬間には、後悔じゃなくて希望に向けて寝てほしいなと思う。
次頑張るぞ、あす頑張るぞ、大学で頑張るぞ、社会人で頑張るぞ、プロで頑張るぞとか、そのためにあすから頑張るぞっていうふうに、切り替えて寝てくれたら、きっとこの甲子園の日々が、この敗戦が、思い出だけじゃなくて、皆さんの次の新しい夢をかなえる原動力になると思うので、考え方次第だっていうのを心に刻んでほしいなと思います。それが伝えたいことです。
それと、もう1個だけ。先ほど既にお話ししたんですが、とにかく、今年、遠い遠い甲子園に2年連続で来れて、志半ばで終わってしまいましたが、もう一度優勝するということに向けて、小さい一歩ではありますが、階段が1つ上がりました。ベスト16から8。
今年の夏は全国で強豪校と呼ばれる学校がたくさん敗れていって、春のセンバツで上までいったチームもことごとく敗退した。これは、なかなかないことです。それだけ一発勝負の高校野球で、安定して勝つということは、とても難しいことです。そういう中で、甲子園に、皆さんに連れて来てもらいました。監督としては。そしてたくさんの思い出や、素敵な時間をいただきました。
もう補欠出身の監督で、いつもいつも同じことしか言えません。僕はどうやって打つとか、投げるとか、走るとか、なんていうお話はできませんが、最後にもう1回、君たちに何か伝えることがあるとすれば、いいプレーができた要因というのは、あなたを支えてくれた人のおかげです。一番近いところで言うと、あなたたちの仲間のおかげです。あなたの、その夢がかなっているということは、誰かの夢を奪っているということです。その犠牲の下に成り立っています。
自分よりチームを優先した3年生へ――「これは普通じゃできない」
仙台育英は日本一のチーム内競争を掲げています。どこの学校も競争は激しいと思いますが、僕らは色々な評価基準の下、結果を残した選手を試合に使っていくという方針なので、1年生から3年生まで。今まで1度もベンチに入っていなくても、最後の最後まで扉が開かれているので、それだけは最も大切にしてることなんですが。
でもその競争で勝ち上がるのは、必ずしも上級生ではないという、大変苦しい競争です。ですから、打率が1厘高いからこの人が選ばれる、みたいなようなことはないですが、紅白戦などで、色々なことをしていれば、自分のヒットに一喜一憂するじゃないですか。心模様が見て取れるんだよ。例えば進塁打とか打った時に、これは評価してもらえるのかな、とか。
そんなふうに、私は見てますよ。これは価値のあるプレーだと、本当に監督は分かってくれてるのかなと思ったり。ストライク率が大事なんて言ってるけど、試合の中でフォアボールをね、厳しく攻めた結果出る時もあるから。そういうのはどうなんだろうって。説明はしているけど、そういうギリギリの人間の心模様みたいなのとか、あるじゃん。
だからそういうのが普通見え隠れするんだけど、それでも、今年の3年生の皆さんは、チームプレーに徹したと思いますよ。さっきもその話ししたけどさ、すごいことなんだよって。
目の前の、目先の結果がほしいんだ。1厘でも打率上げて認められたいんだっていうところで、そこで進塁打のゴロを打って、いい仕事したなっていうふうに思ってベンチに帰ってきたり、そういうプレーをしてるのを気づいてた。バントしないで、打って自分の自信にしたり、チームの中での評価にしたいじゃん。
でも、そこでバントしてね。「このチームを勝たせるんだ」っていうような選択をしてる瞬間がたくさんあったの、分かります。それはすごいことなんだよ。すごいことなの。「自分が1番」になってないっていう。チームや仲間のことが1番っていう優先順位が、メンバーに選ばれなかった皆さんも、1番大切にしてることがぶれませんでした。それがすごいと思う。
もう既に、春、夏の大会の途中で取材をされた時に、この話ししたから、もしかしたら聞いてるかもしれないんだけど。普通はこれから進む、大学や、社会人や、プロ野球や、大人になって大学などを卒業したり、就職したら、皆さん気づいていくんだ。大人の世界に入っていく。
何かの競争の世界とか、売り上げを出さないといけないとか、成果を出さなくちゃいけないとかってなったときに、ほとんどの人が、優先順位は自分になります。自分の家族、そもそも自分のため。だから、人のためとか、会社のためとか、誰かのために、みたいな、優先順位で物事を判断して行動する人っていうのは、世の中にあまりいないです。当然ね。
それぞれの立場があって、守らなくちゃいけないものが、大人になっていくとどんどん出てくるので。でも、これだけ人のためにとか、自己犠牲の精神を持ってやったっていうのは、これはとてもすごいことで。結局どんな競争方法であれ、どんなシステムであれ、選ばれているのが自分ではなくて他者である。
ベンチ入りメンバーに、自分たち最高学年ではなく、1、2年生が多数選ばれてるというのは、普通に考えてチームの雰囲気が良くなるなんていう、そんな夢みたいなことはありません。
そんなのは漫画とかアニメとかだけの話で、実際の現場っていうのはもっとシビアでリアルで、普通、努力しても報われなかったら、来年も再来年もある下級生がうらやましかったり、ねたんでしまったり、そういう感情が出るのが普通です。それは私は悪いことじゃないと思う。それは人間として普通のことだと思うし、隠すべきことでもないと思うし。普通そうなんだよ。
そんなものは言う必要もないかもしれませんが、この夏、私が感じたのは、雰囲気が悪いなあなんて思ったことは1度もないです。ないですよ。なかったでしょ。ああ、雰囲気悪いなあ、なんか重いなあとか、メンバーに選ばれてない子たちの空気が重いなとか、みんなで勝つぞって空気感になってないなあとか、諦めちゃってるんじゃないかなあなんて思った瞬間は、この夏1度もないです。
うなずいてるよ、みんながうなずいている。1、2年生が。でも、それってできないよ。有本や砂には、きのうとかおとといにも話したけど、もし来年自分が、けが、もしくは実力で誰かに抜かれてしまったときに、同じ振る舞いができるかといったら、多分できない。できないね。
それぐらいすごい尊く、大切にしなくちゃいけないと思わせるぐらいの取り組みをしてくれたっていうのが事実です。ですから、甲子園のベスト8敗退も、ここまでの日々が楽しかったなとか、充実してたなとか、成長したなとか、何かプラスのことを感じてる人がたくさんいると思うんだけど、それは全部、控えの選手のおかげです。
お父さんとかお母さんとか、指導者の皆さんとか、大人の皆さんっていうのは、それぞれの立場があって、それぞれに対して皆さん、感謝の気持ちを抱いてると思いますけど、1番感謝しなくちゃいけないのは、繰り返すけど、本当に仲間です。そして、報われなかった仲間です。この先いろんな道に進んで、今度は控えだった子が逆転して主役になるかもしれない。
今度はあなたがプロ野球選手になるかもしれない。ということは、自分の夢がかなったということは、誰かの夢を奪ってるってことだっていうことに気づけるはずだし、忘れないでほしいから。皆さん大好きな野球で、自分の夢をかなえていくっていうことが、多分ここにいるほとんどの人の理想だよね。
でも、その野球じゃなくても、物事において、人間関係において、色々な瞬間、瞬間で、必ず誰かがうれしい思いをしたり、何か喜ばしいことがあった。その裏側には、必ず日が当たらなかったり、努力しても報われなかったり、気持ちが前向きになれなかったりする人がいるっていう。多くの皆さんに表と裏があって、その中で自分の今があって、自分の成果や喜びっていうのは、誰かに支えられてるんだと、高校野球から学んでほしいと思って、ここまでやってきました。
最後です。仙台育英で野球をやって、野球がうまくなったなっていう高校3年間では、薄っぺらいんだよって。卒業したときにプロ野球選手になりましたとか、甲子園で優勝しましたっていうだけの高校3年間では、それは成功とは言えないんだよねというお話しをして、皆さん入学してきたはずです。というわけで、まだ続きます。引退じゃないです。
きょうのこの敗戦をきっかけに、また新しい夢や目標などを持って、きょうしか感じられないこと、きょうしか分からないことがあります。新しい気づきや学びがある、それぞれの立場で。きょうがチャンスです。
だからそのつもりで、きょう野球ノートを書くと思うんだけど、どうぞその観点で記入してもらって、その日のノートを写真などに収めて、自分が困ったり悩んだりしたときに、そこに原点があって、そこに立ち返れば、これから先色々なことあっても頑張れると思う。
「怪物になるしかない」――日本一への道はもう始まっている
下級生の皆さんは、もう1つ本気で日本一になるためには、この3年生とともに学んだことを具体的に生かして、来年の春や来年の夏に、自分たちが目標としているところにたどり着くためには、怪物になるしかないということが分かったと思う。分かったかなってちょっと思いました、見てて。ちょっと気づいたかなって。普通じゃだめなんだよって。良いなとかっていうレベルではだめで、圧倒的に誰かを、他者を、相手を凌駕できるぐらいの、本物の存在にならなければ、そんなところには到達できないんだぞっていう。ちょっといい選手がいるから、甲子園で活躍できたら優勝するわけじゃなくて、優勝するには必ず理由がある。
だから、それを作るための日々がもう始まってるわけだから。あした仙台に帰りますけど、やらなくちゃいけないことは2つです。まず1つ目は、繰り返すけど、この気持ちをまとめて、感謝の思いを、必ず色々な方に伝えることです。
よく考えてみてください。お父さん、お母さん、ご家族は当然だとして、色々な人がいるわけです。色々な人に伝え漏れがないかなと、お話しできる環境であれば、どうぞ会いに行ってお話ししてください。会いに行けなければお電話で。お電話がつながらなければ、メッセージやLINEみたいなもので、必ずその感謝を伝えるということ。
そして、目標を持つことです。別に大層な目標でなくてもいいです。あしたすることでもいいんです。思考が未来に向かわないといけないから、小さい目標を見つけて、スイングスピード1キロアップとか、そんなことでもいいし。もう少し大きな遠い目標でもいいんだけど、思考が前に向くことが大事なので。そういうふうに整理して、あしたを迎えて、1、2年生はあさって練習再開。もうセンバツへの道が始まります。
3年生は、野球を続ける人は次のステージの活躍、そうじゃない人は、自分の人生が豊かになり、あなたに関わる人が幸せだなと感じられる環境を提供できる人になれるように、あしたから頑張ってくださいということでした。
ここからまた頑張ろうと思いますので、どうぞ卒業まで、1、2年生とともに支えていただいて、そして3年生ができなかった優勝を1、2年生がかなえられるように、背中や言葉や色々なもので見せてもらって、一緒にチームを最後まで強くしてもらえたらなと思ってます。お疲れさまでした。ありがとうございました。
夏の甲子園、仙台育英は8月18日の準々決勝で智弁和歌山に敗れ準決勝進出を果たせませんでした。敗戦から約6時間後の18日午後7時半ごろに宿舎で行われた最後のミーティングで、須江監督が選手たちに伝えたメッセージの全文です。