「命の大切さを世界に訴えたい」と願い続けた宮城県気仙沼市の男性の手記が、英語に翻訳され3月11日に出版されました。「妻の命を救えなかった」。その悔しさが男性の活動を支えていました。

 気仙沼市の元消防士、佐藤誠悦さん(69)です。
 ケアマネジャーを務めていた妻の厚子さん(当時58)は、1人暮らしの高齢者宅を訪問した際に津波にのまれ、震災から6日後に気仙沼市の小泉海岸で見つかりました。

 人命救助のプロでありながら妻を救えなかった自責の念。
 震災から11年となる2022年、妻が見つかった場所に置いていた石にメッセージを刻み、石文としました。

 佐藤誠悦さん「女房がどういう思いでこの世を去ったか、その思いを知りたくて毎日、この石に手を合わせてきました。命の会話の場所でしたね」

 佐藤さんは2021年3月11日、10年間の思いをつづった手記を出版しました。
 多くのボランティアとの出会いで、思いやりや命の大切さを学んだこと、そして語り部として生きる決意に至ったことが記されています。

 佐藤誠悦さん「愛する人、愛する家族、愛する同僚、思い出の家々を木の葉のごとくさらっていった東日本大震災が私は憎い。しかし、この真実をしっかり受け止めて新たな目標、目的にしっかり強く歩んでいくことがいかに大切かを知りました」

 その手記が英語に翻訳され、電子書籍としてきょう出版されました。
 佐藤さんは妻が眠る気仙沼市内のお寺を訪れ、報告しました。
 佐藤誠悦さん「お母さんの思いが全世界に届いた伝えられた日でもあるので、新たな思いでしっかり語りついでいきたい」