東北大学にできた、介護ロボットの研究拠点についてです。介護現場の人手不足解消の切り札と期待が寄せられています。

 東北大学青葉山キャンパスの研究室。2月にできた青葉山リビングラボに入ってみると、介護ベッドやリビングセットが。
 ここは介護施設の現場を再現して、開発したロボットが実際に使えるかどうか試す研究開発拠点です。一見すると、普通のベッドですが。
 川原千夏子記者「コンピューター、おはよう」
 AIスピーカー「おはようございます。やまもとさん。ベッドの姿勢を直します」
 ベッド「頭が上がります」
ベッドの横に置いたAIスピーカーに「おはよう」と呼び掛けると、自動であかりがつき、ベッドのリクライニングを起してくれます。

東北大学の研究拠点

介護ロボット

 この研究を進める東北大学工学研究科の平田泰久教授です。
 東北大学工学研究科平田泰久教授「コンピューター、のどが渇いた」
 AIスピーカー「分かりました。お水を持って行きます。取りやすいようにベッドの高さを変えます」
 水を運ぶロボットは、部屋の間取りや障害物を自分で把握します。部屋に入ってきても、障害物と検知。ベッドの横まで無事届けることができました。
 東北大学工学研究科平田泰久教授「今、いろいろなロボットがいるんですけれども、我々こういったベッドも含めてロボットだと思っていて、いろんなシステムが世の中にはあるんですけれども、一つ一つが独立でしか動いていない。我々はそれを連携させたいと思っている」

介護現場の人手不足

 介護の現場では人手不足が深刻な問題です。この20年で介護が必要な人は約3倍に増加。これに対し、介護職員も20年前の約55万人から3倍以上の183万人余りに増えましたが、慢性的に不足している状態です。
 厚生労働省の推計によると、職員の不足数は2023年度には22万人、その後、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年度には32万人、高齢者数がほぼピークになる2040年度には69万人が不足するとみられています。

 政府は2022年に入り「入居者3人に職員1人」としている介護施設の人員配置の基準を緩和する検討を本格化させていて、その中で介護ロボットの活用は人手不足解消の切り札と期待が寄せられています。

人手不足の切り札

 青葉山リビングラボは、介護ロボットの開発と実証を行う厚生労働省の事業で、全国に8カ所設けられた拠点の一つです。寝室のほか、トイレや洗面所、浴室といった介護施設を再現しました。こだわったのが、実際にロボットを使う場面に近づけることです。
 東北大学工学研究科平田泰久教授「例えば朝のシナリオみたいなことを考えると、皆さんベッドから立ち上がって、起きて、そこからトイレに行って、その後、食事に行くとか歯を磨くだとか、そういう一連の動作をする複数のロボットが、このトイレではこういう動作、ベッドの周りではこういう動作、リビングの周りではこういう動作ということを様々なロボットが連携して支援するという枠組みを我々は作りたい」

 青葉山リビングラボに介護従事者として参加しているのが、仙台市太白区で訪問看護ステーションを運営する渡部達也さんです。
 訪問看護ステーション運営渡部達也さん「現状は様々な介護ロボットであったり、福祉機器が出ているんですけれども、正直、ほこりをかぶっていることが多かったりするんですよね。使い手側のニーズにしっかりとマッチしていなかった部分もあると思います」

介護ロボットの導入に期待

 リハビリを専門とする作業療法士の渡部さんは、10年前に訪問看護ステーションわざケアを設立しました。現在の利用者は170人。これに対し、スタッフは、訪問看護師8人とリハビリを担当する理学療法士や作業療法士が9人。人手の確保が難しいと話します。
 訪問看護ステーション運営渡部達也さん「一般のハローワークとか、無料の求人広告を出しますけれども、まずほとんど返答がないようなそういう現状です。全て100%ご希望に沿えるようなサービスができるかと言うと、今の現状でもかなり苦労しないと難しいと思います」

 それだけに介護ロボットの導入にかける期待はひとしおです。
 訪問看護ステーション運営渡部達也さん「リビングラボで、開発企業さんから相談を受けた時に、もちろん技術的な指導は平田先生に、使い手側としてはもうちょっとここをこうした方が良いとかということで、より使ってもらいやすい介護ロボットに商品化できる」

東北大学の研究室

 厚生労働省は、新年度から介護ロボットを活用した実証事業に取り組み、人手不足解消につなげられるか、データを集める方針です。
 全国的に注目が集まる中、青葉山リビングラボも2030年に介護現場で使えるロボットの開発を目標に掲げ本格的に動き出しました。
 東北大学工学研究科平田泰久教授「目先の研究だけではなくて、さらに先の研究というところ、さらに先の介護の在り方とか、未来の介護を見つけることができるのではないか」