5月に宮城県が公表した津波の浸水想定では、沿岸部の小中学校など少なくとも60校が浸水域に入ることが分かりました。子どもたちの命をどう守るのか。避難場所の見直しなどを模索する学校現場を取材しました。

 海から約4キロ内陸にある、気仙沼市の条南中学校。7日、震度5強の地震で大津波警報が発表されたという想定で避難訓練が行われました。
 教師「津波の浸水区域が変更になって、逃げる場所が変わる避難訓練になる。今までと動きが違ったりするが臨機応変に対応してほしい」

宮城・気仙沼市立条南中学校の避難訓練

 訓練は、5月に県が津波浸水想定を公表したことを受け初めて実施されました。気仙沼市には、県内最大の22.2メートルの津波が押し寄せ、浸水面積は東日本大震災の1.4倍に拡大します。
 県によると、浸水エリアに含まれる幼稚園、小学校、中学校、高校は少なくとも60校に上ります。条南中学校もその一つで、どこが避難先としてふさわしいかを検証するため訓練を行いました。

 東日本大震災の際、条南中学校は校庭が浸水しましたが校舎は被害を免れました。新たな想定では、3メートル以上5メートル未満の浸水が想定されていて、校舎2階まで浸水すると予測されています。
 そのため、これまでの避難計画に盛り込んでいた3階、4階への垂直避難では孤立する恐れがあるとして、近くの高台に避難場所を変更することを検討しています。

避難場所の見直しを検討

新たな避難先を検討

 気仙沼市への津波到達は、県内の自治体で最も早い21分。震災の時の30分よりも10分ほど早くなるため、より迅速な避難が求められます。
 新たな避難先は、学校から約1キロ離れた気仙沼市立病院近くの海抜30メートルほどの高台を予定しています。途中、交差点で車の往来が続き、道路を渡るのに時間を要する場面もありましたが、高台へは目標の15分を下回る13分ほどで避難できました。

 生徒「病院に行く人が通る時とか、タクシーとか結構交通量があるなと思った」「歩道橋を下りた時に津波にのまれそうな感じだったので、避難している途中に津波が来たら危ないなと思った」
 条南中学校宮崎明雄校長「想定では3列になって橋を渡る想定でしたが、できませんでした。更に列が空く、意図せずに空くので、前に詰めようとして走ったり、これまで想定と違った内容でしたので思ったこととは違う。やっぱりやってみないと分からないんだなと」
 条南中学校では、訓練の課題を洗い出し、生徒から意見を聞いた上で、2023年度には新たな防災マニュアルを策定する方針です。

子どもの命を守るため模索が続く

震災で校庭が浸水した仙台市立岡田小学校

 最大10.3メートルの津波が想定される仙台市。8つの学校が浸水エリアに含まれました。
 宮城野区の岡田小学校は、存在する市内の小学校では唯一、校庭まで津波が押し寄せました。
 岡田小学校熊谷敬子校長「仙台市で小学校として他の学校よりも津波訓練の実施回数も多いし、避難経路も違うと思う」

 震災時を上回る1メートル未満の浸水が想定されていますが、学校周辺に高台がないため、校舎3階への垂直避難を基本に避難計画を検討しています。
 近隣住民の指定避難所にもなっている岡田小学校。児童と住民の避難先は、校舎3階の教室に地区ごとに割り振る予定です。備蓄品も避難先と同じ3階の一室に保管しています。
 学校に誰もいない夜間や休日に災害が起きても避難できるように、震災後、校舎の外側に屋上に続く階段を設置しました。
 岡田小学校熊谷敬子校長「夜地震があった時には地域の方が鍵を持っていて、ここで地域の方が鍵を開けます」

犠牲者を出さないために

 ハード面だけではなく、ソフト面の強化にも取り組んでいます。子どもたちに防災意識を高めてもらおうと、定期的に防災学習を実施しています。
 担任「さて、この教室はなんていう名前ですか」
 児童「防災ルーム」
 担任「この防災ルームにはどんなものがある」
 児童「11年前の大震災みたいになるかもしれないから、そういう時に何を準備すれば良いか書いてある」

 最悪の想定で犠牲者を出さないため、備えに終りはありません。
 岡田小学校熊谷敬子校長「想定が出るたびに、私たちは計画を見直す必要がありますし、地域の方と一緒に逃げることも含めて、恐れるだけではなく正しく知識を得て避難する。そういったことを学校でも指導していきたい」