仙台出身の男性が東日本大震災をテーマに執筆した作品が、19日に発表される芥川賞の候補に選ばれています。今の気持ちや作品に込めた思いを聞きました。

 上野比呂企アナウンサー「仙台駅近くの書店です。こちら、コーナーの一角に『芥川賞候補ノミネート作 佐藤厚志・荒地の家族』と書かれたチラシがあります。この下には、佐藤さんのこれまでの作品が並んでいます。実は、この『荒地の家族』の著者の佐藤さんですが、あちらで本の整理をしている男性が佐藤さんなんです」

 仙台市出身の佐藤厚志さん(40)は、地元の書店に勤務する傍ら執筆活動を続けていて、最新作の「荒地の家族」が第168回芥川賞の候補作に選ばれました。

 佐藤厚志「ノミネートがある意味目標だったので、僕的にはもう半分達成したという感じで。周りの人がみんな盛り上がっているので、期待に応えられたらいいかなくらいの感じです」

 作品の舞台は宮城県亘理町。東日本大震災の津波で仕事道具を全て失い、その後、妻も病気で亡くした造園業を営む男性が、元の生活をとり戻そうと奮闘する姿を被災地のリアルな情景とともに描き出しています。

 佐藤厚志さん「身近に植木屋の友達がいて、一人親方でやってる人間を主人公にして小説をいつか書こうと思ってたんですけど。現時点から(震災を)振り返る小説なので、読み手が混乱しないように時系列を整理したりとか、エピソードをとったり入れ替えたりしながら書きましたね」

 自身も仙台市で被災した佐藤さん。読者それぞれの体験と重ね合わせながら、物語を自由に受け取って欲しいと話します。

 佐藤厚志「亘理っていう海辺に近いところに暮らす人の生活者の目線で、悪戦苦闘を地道に描く感じになっているのでそんなに構えずに読んでもらえたらいいかなと。手に取ってもらえたらいいかなと」

 芥川賞の選考会は19日に都内で開かれ、佐藤さんの「荒地の家族」を含めた5作品の中から選ばれます。