水難事故に詳しい専門家は、ため池は一度落ちたら自力では、はい上がりにくい構造になっているため、不用意に近づかないよう注意を呼びかけています。

 今回の事故が起きたため池では、地中に水が浸透するのを防ぐため遮水シートと呼ばれる黒いゴム製のシートが張られています。

 水難事故に詳しい専門家は、この遮水シートが、ため池を非常に危険な場所にしていると指摘します。

 水難学会斎藤秀俊会長「下のゴム敷きは滑りますので、滑らないような工夫をしてある靴以外は上がれない。どんなに訓練されていても大人でも子どもでも、こういった斜面で一度落ちたら、はい上がることはほぼ不可能だと考えてもらっていいと思います」

 「がんばれがんばれ、もう少しそこから」 のり面がコンクリート製のため池に大人が落ちたという想定で、自力ではい上がれるか検証した映像です。

 必死ではい上がろうとしますが、腰が水面から出る辺りで足が滑ってしまい、つかめる物もないため、これ以上上がることはできません。

 遮水シートが張られているため、池は更に滑りやすいということです。

 水難学会斎藤秀俊会長「一つは、ため池には不用意に近づかないということ。これが一番原則なんですね。それから次に、万が一落ちてしまったら、力を抜いて背中を下にして背浮きって状態で浮いて救助を待つ。周りの人は早く119番通報をかけて、救助隊を現場に呼ぶということですね。このあたりが、現実的には、一番確実に命が助かる方法になります」

 宮城県によりますと、県内では2016年度からの5年間でため池に転落し死亡した人は6人いるということです。このうち2人が10歳未満の子供です。

 斎藤さんは、県内には民家の近くにあるため池が多いことから、子どもが遊び場にしやすく、今回のような事故も比較的多く発生していると話していました。

 そして、今回のような事故を防ぐためにも、ため池の危険性の周知や転落してもはい上がれるような安全対策を施すことが重要だと指摘しています。

 水難学会斎藤秀俊会長「網、ネットを斜面にはわせて落ちてもすぐはい上がれるようにすると。落ちても命を失わないと。そうやってため池と地域社会とが共存するような、そういった流れを作っていくべきじゃないかなと思います」