都市部の在宅医療についてです。高齢化や新型コロナの感染拡大などを背景に都市部でも在宅医療のニーズが高まっています。

 「こんにちは、往診です」
 「お元気でしたか。お元気そうでなによりです」
 医師の星野智祥さん(55)。仙台市若林区にある在宅診療所、やまと在宅診療所あゆみ仙台の院長です。この日は、若林区に住む92歳の男性の自宅を訪れました。
 「ご気分どうですか、大丈夫ですか、はい、ありがとうございます」
 「ちょっと胸の音、聞きます」
 「体、すごい温かいですね。お風呂っていつ?」

 星野さんの診療所では、24時間態勢で在宅医療を提供していて夜中でも電話があれば医師が駆け付けます。男性を介護している、85歳の妻は。
 妻「家で寝込むようになったもんですから。(病院に)行けなくなっちゃったんですよね。時間関係なく朝でも夜でも電話してもね、対応していただけるので助かってます」

仙台市で在宅医療を提供

 星野さんの診療所は、仙台市の若林区や太白区、宮城野区などで高齢者を中心に、約250人の患者を受け持っています。
 星野さんは、総合病院に20年ほど勤めた後、在宅医療の道に進み2021年5月、自分の診療所を開きました。
 やまと在宅診療所あゆみ仙台・星野智祥院長「都市部で在宅医療やってますって、あんまりイメージ湧かない方も多いかと思うんですけれども、都市部だからこそ、在宅のニーズっていうのは非常にあります」

 高齢者の増加や、新型コロナの感染拡大による病院での面会制限などを背景に、仙台市などの都市部でも在宅医療への需要が高まっています。開業当初は、診療のほかスタッフの採用や経理も担当していました。
 1年で100人ほどの患者を見込んでいましたが、実際には開院から半年で約150人の患者を受け持つことになりました。
 やまと在宅診療所あゆみ仙台・星野智祥院長「僕自身が経理もやってリクルートもやって税理士さんとのやりとりもかもやって結構いろんなことをやってたんですね。最初の頃は僕自身が本当に24時間365日やってたんですけれども」

都市部でも需要が高まる

 多くの医療機関が集まる仙台市。しかし、在宅診療を担う医師は少なく、その数が不足しています。
 2019年に宮城県が在宅医療を行っている県内360の医療機関を対象に調査をしたところ、在宅医療を担当する医師の数は1医療機関あたり平均で1.9人でした。仙台市は1.6人と、県全体を下回っています。
 やまと在宅診療所あゆみ仙台・星野智祥院長「そのドクターの個人的な負担によるところが非常に多くて、そのドクターが診療ができないという形になると、その診療所自体の機能がストップしてしまいます」

 星野さんの診療所も多忙を極めたため開業前に3年間、在宅医療について指導を受けた医師の田上佑輔さんに協力を求めました。
 田上さんは登米市にやまと在宅診療所を開設し、県北部を中心に在宅医療に取り組んできました。
 やまとでは、登米市や大崎市などの診療所に勤務する複数の医師と連携し、チームを組んで県北エリアに在宅医療を提供しています。
 首都圏や県外に住む医師もチームの一員として県北部に通い在宅医療に携わっていて、地方の医師不足の解消につながると期待されています。

 星野さんはこの仕組みを都市部での在宅医療に生かせないかと考え、7月に診療所の運営を田上さんのやまとに引き継ぎました。
 これにより仙台にある星野さん診療所では、非常勤の医師が5人ほど加わり日中と夜間の診療を交代で担っています。このうち2人が登米市の診療所に所属しています。
 やまと在宅診療所あゆみ仙台・星野智祥院長「心身両方の面ですごく負担が減っています。逆に日中の訪問診療に力を注ぐことができるというふうになっています」

常勤1人非常勤5人で診療

 都市部でも地方でも、在宅医療のニーズは今後も増えていくとみられています。宮城県は団塊の世代が75歳以上になる2025年には、在宅医療などへの需要は2013年に算出した時と比べて約4割も増えると見込んでいます。
 やまと在宅診療所あゆみ仙台・星野智祥院長「この地域には在宅医療という選択肢がありますっていうところを、もっと皆さんにアピールできるような人のネットワークをつくっていきたい。質の高い在宅医療が届けられるように、私たちは気を引き締めて取り組んでいく必要があると思っています」