10月に栃木県で開かれる全国障害者スポーツ大会に出場する、知的障害のあるスイマー。多くの人の応援を胸に、高みを目指し挑戦を続けています。

 水しぶきをあげながら力強い泳ぎを見せる橋上一歩さん(32)。6月の予選会を経て、10月末に栃木県で開かれる国内最大の障害者スポーツの祭典、全国障害者スポーツ大会に仙台市の代表として出場することが決まっています。
 橋上一歩さん「仙台市を背負って恥をかかないように、自分のタイムを少しずつ伸ばしていけたらなと思います」

橋上一歩さん

 生後10カ月の頃に髄膜炎を発症。手術をしましたが、脳に障害が残りました。体が丈夫になるようにと6歳の時に水泳を始めた橋上さん。
 橋上一歩さん「ちょっと水慣れが怖かったので、恐怖心が。はじめはちょっとう~んだったんだけども、やると体が勝手に動いて楽しいかなと」

 宮城県の大会記録を次々と更新するなど、頭角を表しました。自宅には数えきれないほどのメダルや盾が大切に保管されています。
 橋上一歩さん「一番思い出にあるのは、ベルギーの時ですね。まだ高校生の時ぐらいですね」

輝かしい実績

 高校3年生の時には、ベルギーで開催された知的障害者の世界選手権に日本代表として出場。メドレーリレーで見事銅メダルに輝き、仙台市からスポーツ栄誉賞を授与されました。
 橋上一歩さん「夢は高校を卒業して社会に出てから水泳を続け、更に躍動的に生きたい」

 あれから15年。あの時の言葉通り、橋上さんは働きながら水泳を続けています。勤めているのは、自動販売機事業を手掛ける仙台市内の会社。倉庫から指定された商品を集める作業を行っています。
 橋上一歩さん「最初はこの仕事向いてるかなとちょっと不安はあったけども、頑張ってます。やりがいがあります」
 サントリービバレッジソリューション東北支社高橋啓一さん「細かい所まで気を配るっていうか丁寧な仕事をしますね。なので、この仕事ってどうしても商品間違ったりだとか、数を少なくしたりだとかそういうことが多々あるんですけど、ほとんどないですねそういうことは。しっかりやってくれますね」

働きながら水泳を続ける

 知的障害のある人が出場できる種目は10種類で、全国から163人が参加します。橋上さんが出場するのは25メートル自由形とバタフライ。目標タイムはいずれも14秒から15秒です。大会を1カ月後に控え、練習にも熱が入ります。
 杉村嘉邦コーチ「下見てると手の位置がバラバラになるから」
 橋上一歩さん「ちょっとバラつきがある」
 杉村嘉邦コーチ「体が揺れるから。真っすぐ、真っすぐ前見て」

コーチの指導で全国大会へ

 指導するのは、橋上さんを小学生の頃から見てきた杉村コーチ。強化練習のために青森県から駆け付けました。この日はクロールを中心に、フォームを細かくチェックします。
 杉村嘉邦コーチ「2本目はもうフォーム崩れまくってた」
 橋上一歩さん「あ~しまったなと思って。力入ったらどうしてもああいうふうになる」
 杉村嘉邦コーチ「彼もコロナとかあって泳ぐ機会も少なかったので、少しずつこの強化練習を通してフォームがまた戻ってきたというか、記憶が戻って来たんじゃないかなと思うので、余裕があればキックをもうちょっと修正できれば、タイムももうちょっとあと1秒くらい速くなれるんじゃないかな」

 新型コロナの影響で、この3年間大会は中止に。プールが使えず、練習が十分にできない時期もありました。30代になり、体力面での課題もありますが、それでも練習を重ねるごとに確実にタイムを縮めています。
 水泳を始めて26年。挑戦を続ける橋上さんを家族も応援しています。
 母親・美穂さん「本人が諦めないで続けるってことは、一番の力になってるのかなと思ってますし、年齢的に考えると最後の大会になるかもしれないので、楽しんでくれれば一番良いかなって」

 橋上一歩さん「まだまだ課題がいっぱいあるので、もっと(練習を)こなさなければいけないなとそう思いました。メダル2冠獲れるように最後まで終わって仙台に帰れるようにしたいです」