深刻化する少子高齢化による人手不足の解消につながると期待されている、ロボット開発の最前線です。

 仙台市宮城野区にある仙台うみの杜水族館です。開館前の午前6時半から清掃作業が始まります。清掃業者が2022年から導入した清掃ロボットです。事前に設定したルートに従い、フロアを移動して自動で床のごみを吸い取ります。
 陽光ビルサービス川村仁課長代理「立面の部分を人の手で床はロボットでっていう形で、恐らく全体でいうと30%から40%は負担が軽減できるのかなとは考えております。作業員の高齢化がどうしても進んでおりますので、労働環境が改善されたことで清掃員がそれぞれモチベーションが上がって、清掃の品質も上がっているので」

 日本の人手不足は、歯止めのかからない状況が続いています。人口は2008年をピークに2011年から12年連続で減少しています。2050年には1億500万人を割り込み、15歳から64歳までの生産年齢人口は約5500万人と推計されています。地方ほど少子高齢化は深刻で、宮城県では2050年に人口は約183万人と2020年と比べ2割減り、生産年齢人口は95万人を割り込むとみられています。

 人手不足の解決につながると期待されるのが、AI技術を活用したロボットです。現在、世界中で開発が進んでいます。宮城県の企業が手掛ける開発拠点が東京都にあります。ここでは、清掃家電やテレビ、デジタル家電などの商品企画から量産、販売までを一連で管理しています。
 アイリスオーヤマ家電開発部佐藤貴英マネージャー「これから我々1000台、1万台という形でロボットを出荷していきますので、どういう順序で組み立てていくか。それによってでき上がったロボットの品質を確実に担保していくためにはどう最適化していくべきか、今それをやっている最中です」

ロボット事業に参入

 アイリスオーヤマは、4年前にロボット事業に参入しました。人手不足対策に加え非接触といったコロナ禍での感染対策を追い風に、清掃と配膳ロボットの累計出荷台数は1万台を突破しました。
 アイリスオーヤマ家電開発部佐藤貴英マネージャー「数千社に及ぶお客様と、実際にコミュニケーションをしてきました。実際にお客様が困っていることは何なのか。現場環境で障害になりうるものは何なのか。そういう情報が、やっぱり(これまでの)収穫だったと考えています」

 2024年夏には、約3年の開発期間を経て中国企業のソフトウェアを搭載した清掃ロボットを自社生産し販売します。高齢者でも操作しやすくした新しいモデルで、吸い込む除塵機能だけではなく水拭き掃除もできます。大きな特徴は、着脱式の水タンクとバッテリーです。
 アイリスオーヤマ家電開発部佐藤貴英マネージャー「清掃しているフロアに給水する設備があれば良いですけど、無い場合はロボットをそこまで移動する必要がある。かなり大変なので、(フル)充電時間は3時間とか4時間とかかってしまうんですけど、(着脱式は)ロボットの充電が無くなってしまったら満充電の電池に取り換えてしまったらまたすぐに動き出せますので」

 清掃や配膳といったロボット市場は数年前から国の内外で急拡大していて、民間の調査会社のまとめでは、国内では2030年には2022年の2.15倍の3418億円に及ぶと推計されています。

地域産業の維持に不可欠

 全国でも特に少子高齢化が進む東北地方では、ロボットが清掃や配膳、警備、介護などサービス業に与える経済効果は非常に大きく、地域産業を維持するためにも不可欠だと地域経済の専門家は話します。
 七十七リサーチ&コンサルティング田口庸友首席エコノミスト「(ロボットの導入は)人手不足の解消と、生産性や賃金が上がらない業種の改善といったものにつながる効果がある。大手の試算を基に推計してみますと、2030年で宮城県で57億円くらい。東北全体でも215億円くらいの規模になると。これは2022年から見ると大体倍くらいになると。非常に期待としては大きいと思います」

 東京都のオフィスでは、1月18日にミーティングが開かれていました。アイリスオーヤマは2025年に参入当初からの目標だったロボットのボディーだけではなく、ソフトウェアも含めた完全自社生産での販売を目指しています。セキュリティーや使いやすさなど、ソフトウェアの根幹部分をゼロから作り上げています。
 アイリスグループシンクロボ小倉崇社長「今普及しているロボットって、結構中国のロボットだとかアメリカのロボットだとか多いのが実態なんです。日本のメーカーがロボットをソフトウェア込みでちゃんと作れる状況というのは日本にとってもすごく良いことだと思うし、人々の暮らしも少しは良くなるじゃないかなと思っています」

 ロボットができる仕事はロボットに、人しかできない仕事を人に。限られた労働力を最大限に生かす鍵を握るロボット産業の扉は、開いたばかりです。
 アイリスグループシンクロボ小倉崇社長「アイリスオーヤマの発想だとかアイディアなどが入れ込めるロボットが作れるようになるので、ロボットがやってくれる。それで人が自分のやりたいことに取り組めるという世の中になると良いなと思います」