夏日が続出し、各地で季節外れの暑さとなるなか今、熱中症リスクが高まっています。夏本番を迎える前の5月中にやっておきたい対策を取材しました。

■夏日続出 熱中症リスク高まる

 早くも各地から聞こえてきた夏の足音。兵庫県の豊岡では最高気温28.8℃を記録するなど、今シーズン最多の全国500地点で夏日を観測しました。

 開催中の大阪・関西万博。最高気温27.2℃を記録したなかでも行列が…。といってもパビリオンの列ではありません。暑さ対策で用意された給水スポットです。

給水した人 「もう1本飲んじゃって給水して、またこれからまわろうと」

 東京も14日は2日連続の夏日となる最高気温26.3℃を記録。

 この暑さに医療の現場も対応に追われています。取材したのは、都内で訪問診療を行うクリニック。

医師 「体調は問題ないですか」 男性(90代) 「ないと思う」

 体調には問題ないと話すのは品川区に住む90代の男性。

医師 「一応、熱を計ってみますね」

 体温を確認すると…。

医師 「37度4分ですね、少し微熱かな」 男性(90代) 「何か悪いんでしょうか」

 男性は自覚がないものの発熱をしている状況に戸惑いを隠せません。

医師 「表情的には元気そうですし、何か調子を崩しているよりかは、急に暑くなったから熱が体にこもってる可能性が高いかなと思ってて。この状態で何もしないと、熱中症、脱水症になる人もいるので注意して」 男性(90代) 「極力、サイダー飲んでます」

 男性は幸いにも熱中症にはなっていませんでしたが、油断は禁物です。

男性(90代) 「今は何もおかしいことはありません」 医師 「熱中症になる前の段階で来られたけど、少し熱がこもっているから、悪くならないように注意してみていきます」

 このように自覚症状がないまま症状が進行してしまうのが、この時期の暑さの特徴の一つだといいます。

ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長 「気温は25℃前後なのでそんなに上がりきっていないが、湿度が高い日もあって、高湿度は脱水症や熱中症のリスク(になる)。うまく汗が乾かず、体温が体の中にこもったり、汗をたくさんかいて脱水になったり体調を崩すリスクになる」

■5月中にしたい「暑熱順化」

 今できる有効な対策はあるのでしょうか。

田代和馬院長 「暑熱順化。暑さから身を守る仕組み」

 「暑熱順化」とは体が暑さに慣れることを意味します。暑熱順化ができていないと、汗をかきづらくなり、体の中に熱がこもってしまうため熱中症の危険性が高まります。

 対して暑熱順化ができている状態だと汗をかきやすくなり、体の外に熱を逃がしやすくなるため、熱中症のリスクが下がります。

 先ほどのクリニックでも診察の際に暑熱順化の呼び掛けを行っています。

医師 「ちゃんと汗をかくのは重要。季節の変わり目は体が汗をかくのに慣れていないから、汗をうまくかけなくて熱がこもる人も」

 なかでも手軽に家でできるのは…。

田代和馬院長 「例えばこの時期シャワーだけで済ませてしまいがちだが、のぼせない程度で湯船につかってじわっと汗をかく」

 田代院長によると、37~38℃の温度で5~10分間入浴し、汗がにじむ程度がベストだといいます。

田代和馬院長 「5月中旬からこういう暑さになってしまうと、9月、10月まで長い戦いが始まるなと。今年はその戦いの始まりが本当に早い」

 いつにも増して早く訪れそうな夏。この場所が今一番急いでいるかもしれません。

 2日連続となる夏日を記録した前橋市。消防署では隊員たちが迫り来る夏へ向けて訓練に励んでいます。

前橋市消防局 安全管理担当 手島一樹係長 「消防隊員は真夏の火災現場で大変、熱中症を発症する確率が高くなっている。暑熱順化トレーニングを行って、暑さに体を慣れさせる必要がある」

 訓練は実際に出動する時と同じ重さ5キロの服を着てランニングなどの運動をします。

 今回は番組スタッフも訓練に参加させてもらいました。

番組スタッフ 「これだけでもけっこう重い」

 実際に走ってみると…。

番組スタッフ 「服が重いので、まだ3周しかしていないが汗がにじみ出てきている」

 訓練を終えると隊員たちも汗だくです。

前橋市消防局 安全管理担当 手島一樹係長 「一般的に言われていることは、体に無理のない範囲で適度な汗をかく運動を続けることが、一般の暑熱順化には重要なのかなと考えている」