宮城県の大崎市鳴子地区で生産され、もちもちしておいしいお米として知られるゆきむすびを生産する鳴子の米プロジェクトが、発足20周年を迎えました。消費者など多くの人に支えられて作られるこのお米が、鳴子地区に活気をもたらし続けています。
JR陸羽東線の中山平温泉駅近くにあるむすびやでは、地区の女性たちが鳴子の米として知られるゆきむすびを使ったおむすびを作って販売しています。ゆきむすびはもち米に近い性質をもった米で、粘りがあり冷めてもおいしい特徴があります。店では地元の具材を中心に、9種類のおむすびを作っています。
伊藤沙織店長「梅干しは岩出山の佐藤農園の梅干しを使わせてもらってまして、すごく酸っぱいわけではなく食べやすいです。リピーターも多いです。自家製の麹なんばんのおむすびは、ぴりっと辛いんですけど甘辛な感じでお子様でも食べられる方が多い。あぶっているので香ばしさもあるので食欲をそそる」
おむすびはこの店のほか、大崎市岩出山の道の駅でも販売しています。
ゆきむすびは、2006年に発足し鳴子地区の農家や住民などで構成する鳴子の米プロジェクトが古川農業試験場と連携して生み出した新品種で、文字通り鳴子生まれのお米です。
ゆきむすびの冷めてもおいしい特色をアピールするため、地域の農家や旅館の女性らが集まって100種類以上に及ぶおむすびを試作して研究しました。
伊藤沙織店長「ゆきむすびおいしいよねと色々な方から言われるが、自分のところで誇れるお米があるというのは素晴らしいことだと思います」
むすびやには、弁当や仕出しの注文も多いということです。手作りの風味を大切に、いなかのお母さんのお弁当をイメージして作っています。ゆきむすびのおむすびが、ひときわ存在感を放ちます。
この日弁当を注文したのは、新年の授業初日で給食が無い学校の先生たちです。ゆきむすびのおいしさは、地区の多くの人に知られ愛されています。
「ももちもちしていて、とても食感が良くて、冷たいがとてもおいしい」「ヘルシーなおかずで、女性の先生にも好評です」
鳴子小中学校簗田智志校長「20年前にこれが出たときに、どうなるんだろうと。高齢化も続く中で本当に続けられるのかなと心配したんだけれども、20年経って今も食べてもらえるのは、生まれ育った私としてはうれしい」
鳴子の人たちが名づけたゆきむすびという名前には、雪国で作る、作る人と食べる人を結びつけるお米という意味が込められています。その思いを形にするため、プロジェクトでは、消費者との交流を積極的に行っています。田植えや稲刈りには、毎回多くの人が参加します。
「このお米が自分が食べるお米になると考えると楽しい」「鳴子に良く来るんですけど、すごいこのお米がおいしくて、欲しいなと思いネットで調べたら体験があるというのを見て、おいしいお米だから自分でやってみたいなと」「普段は米を食べるだけの東京に住むいち消費者なので、それが生産の現場に関わるというのは自分としても、改めて食に意識を向けるきっかけになっている」
米作りへの関心を高めてもらおうと趣向もこらしています。
上野建夫理事長「ここ刈らなかったよと言われたんですが、これには深い意味がありまして、毎年こうやっています。この辺の田んぼでは、4株の稲を刈ると茶碗1杯のご飯になると言われています。4×3株で12株あります。1日に3杯ご飯を食べる人は1日分となります。3食ご飯を食べる人は、これだけの田んぼを食いつぶしているという意味合いです」
農業への理解と共感を得て、中山間地で持続的な米作りが可能となる価格で買い支えてもらうため、ゆきむすびは当初から一般的な米より割高な価格設定になっていました。
しかし2025年度は5キロ4300円と、令和の米騒動で世間の相場との差がなくなりました。
上野建夫理事長「生産者側の環境を理解してくれる消費者の皆さんが、少し高くても買うよという相互理解の立場で成り立ってきたんですが、20年を経て逆転しつつある状況になってきています20年かけて築いてきた消費者と生産者の信頼が、ようやく実を結んでいるのかなと感じています」
12月、鳴子の米プロジェクトの発足20年を祝う式典が行われました。
鈴木憲和農林水産大臣「国が何かをしなくても、地域はまだまだやることがたくさんできるんだという希望を私たちに見せてくれているのが鳴子の米プロジェクトではないかと思います」
伊藤沙織店長「この度は20周年感謝祭、お越しいただきありがとうござます」
感謝祭には、全国の消費者や農業を研究する学生などいわば鳴子の米の応援団と言える多くの人が駆け付けました。20年間のネットワークの広がりが分かります。
参加者の1人、秋田県大潟村で大規模農業を営む松橋拓郎さんは鳴子の活動に刺激を受け、消費者と交流して日本酒を作る取り組みを地元で進めています。
松橋拓郎さん「やはり大事なのはコミュニティの中の人間関係とか関係性かなというのはすごく感じていて、そこが学べるところでそこを今後も大事にやっていきたいと思っています。それは地域が違っても共通すると思っています」
発足から20年、鳴子の米プロジェクトは人のつながりを広げ発展する一方で、他の産地と同様に生産者の高齢化による後継者不足といった課題も抱えています。
上野建夫理事長「私自身の最大の思いと言ってよいと思いますけど、これまでずっと生活しているあの集落を何とか荒廃しないで、後世につないでいければなと。農の風景を大切に守っていきたい」