宮城県が先週公表した津波の浸水想定についてです。公表から1週間、沿岸部の住民は避難マニュアルの見直しに動き出しています。
 災害への備えに終わりはない、次の災害に備える住民の思いを取材しました。

 県が、5月10日に公表した新たな津波の浸水想定。満潮時に地盤沈下が起き、防潮堤や水門が壊れるなど最悪のケースを想定していて、浸水面積は県全体で391平方キロメートルと東日本大震災の1.2倍に上ります。
 宮城県河川課佐藤宏課長「何としても人命を守るのが今回の主眼。何があってもとにかく逃げるという行動を取ってください」

津波で被災し移転するも移転先が浸水想定域に

移転先が新たな津波想定域に

 東松島市のあおい地区で、自治会長を務める小野竹一さん(74)です。東日本大震災の津波で、海の近くの大曲浜にあった自宅が流されました。
 安全な場所を求めて、2016年に海から3.5キロほど離れたあおい地区に移転した小野さん。しかし、新たな想定ではこの地区にも津波が及びます。
 あおい地区会小野竹一会長「ここには津波来ない。大丈夫という先入観がすごくあったと思う。自分の命を守るために、どんなふうにするのかが大事ですから、それに適応した暮らし方、避難の仕方、高齢者、小さい子どもを守るためにどんなことをしていなかればいけないか」

宮城・東松島市の津波浸水想定

 東松島市には、最大10.6メートルの津波が押し寄せる想定です。今回の想定では、東日本大震災の1.3倍が浸水することに。
 あおい地区は市内最大の集団移転団地で、災害公営住宅や戸建ての住宅に580世帯、約1300人が暮らしています。
 東日本大震災では津波は到達しませんでしたが、今回の想定では1メートルから3メートルの津波が押し寄せます。

新たな避難マニュアルを作成へ

 あおい地区の自主防災組織では、これまで年に2回のペースで防災訓練を行ってきました。今後、内陸や高台への避難場所を盛り込んだ避難マニュアルを作成することを決めました。
 あおい地区会小野竹一会長「あおい地区として、一番良い避難マニュアルをこれから作っていく必要がある。できれば6年の総合防災訓練までには、住民に示すことができれば、一番良いのかなと思う」

 東日本大震災を上回る災害にどう備えるのか。岩沼市は県の担当者を招き、19日に住民説明会を開催。この他、松島町と利府町以外の12の市と町でも住民説明会を検討しています。
 宮城県河川課佐藤宏課長「もしかすると、あの時よりも深くなるかもしれない。
そういったことがあり得ることを常に認識しながら、津波、地震が来た時には、避難という行動を取っていただきたいということを説明していく」

避難して命を守ることの大切さを訴える

 今回の想定を受け、思いを新たにした人がいます。津波で母親と祖父母を失った、女川町の鈴木智博さん(23)です。
 震災後、中学校の同級生たちと津波が押し寄せた町内の21カ所すべての地区に石碑を建て、避難して命を守ることの大切さを訴え続けています。
 女川いのちの石碑プロジェクト鈴木智博さん「やっぱり、ここまで来るのかと驚きました」

宮城・女川町の津波浸水想定

 女川町では、最大20.7メートルの津波が想定され、浸水面積は東日本大震災の2.1倍に拡大します。
 女川いのちの石碑プロジェクト鈴木智博さん「どれだけ災害に備えていても終わりはないと考えていますし、少しでも命を守れるような行動を取ってほしいと自分たちの経験からも思う」

命を守る避難を

 竹浦地区に造った石碑。そこに刻んだ言葉。
「大きな地震が来たら、この石碑よりも上へ逃げてください」
 新たな想定では、津波はこの石碑を超えることが分かりました。東日本大震災を上回る災害に備える。次こそ、命を守る避難を。
 女川いのちの石碑プロジェクト鈴木智博さん「今回の浸水想定が出たことで、新たに災害に対する関心が上がったと思うので、この機会に改めて災害に対する準備や避難の行動を考え直してほしいと思う」