老朽化などで閉館していく昔ながらの温浴施設。多くの人に愛され、あの紅白歌手を育てた“聖地”も今月末でその歴史に幕を閉じます。

■28年の歴史に幕 常連客が涙

 神奈川県厚木市に今月いっぱいで28年の歴史に幕を下ろす温浴施設があります。

 サウナ―から聖地と呼ばれ、銭湯アイドル「純烈」が育った場所としても知られる憩いの場「東名厚木健康センター」です。

 最後の日々を惜しむように今、多くの人が集まっています。

 施設の自慢は7種類の湯船に開放的な露天風呂。訪れた人の心と体を温め続けてきました。

70代の人 「いやー気持ち良いな!ちょうど良いよ」

 閉館を前に復活したのが、支配人自ら客の背中を流すサービスです。

70代の人 「何年ぶりかな?支配人にやってもらうの」 支配人 「結構、前」 70代の人 「結構、前だな」

 28年前の開業当時から通う男性は…。

開業当時から通う70代の人 「最高だね!この支配人はうまいんだよ、昔から」

 ここには人と人をつなぐ温かさがありました。

 突然、サウナの周りに長蛇の列が…。

 名物「爆風ロウリュ」。他では味わえない体験が“聖地”と呼ばれる理由です。

週3日来店 常連客 「熱い!熱い!」 「(Q.残りわずかだが?)寂しい。本当に」

 男性は10年来、週3日通ってきました。

 湯上がりの食事もお楽しみの一つ。ここで知り合った仲間と語らうのが日課でした。

週3日来店 常連客 「ここで知り合った人たちは数知れない。かけがえのない財産」

 ここで一日を過ごすことが常連客の生活の一部になっていました。

 恒例なのが、ステージでの歌謡ショー。この場所で人生が変わった人もいます。

この場所で出会った夫婦 「(Q.2人にとってどんな存在?)私と彼女の最後の一生の出会い。夫婦になっちゃった。昔は座敷だった。隣り合わせ知らない同士でも乾杯して友達になってた。幸せになる一歩を築いてくれた店」

■純烈育てた健康センター閉館

 そして、厚木健康センターと切っても切れないのが純烈です。今月6日にこの施設でのラストライブを行いました。2012年からこのステージに立ち続け、紅白出場を果たすまでに成長しました。

純烈ファン(60代) 「純烈と出会ったのはここ。すごく背が高くて皆イケメンだからね。そういう場所に巡り合ったっていうのが偶然うちらも見るきっかけをもらえた」

 純烈にとってもファンにとっても特別な場所でした。

 しかし、建物は老朽化。

東名厚木健康センター 川口歩支配人 「(Q.体力でいうと残り何%くらい?)もうほんとすれすれのところ」

 四半世紀以上が過ぎ、施設の維持が難しくなってきました。

東名厚木健康センター 川口歩支配人 「最近は(修理の)回数が以前とは比べ物にならなくて、24時間年中無休で動かしてきたので…」

 苦渋の決断でした。

 館内では思い出を残す人の姿が絶えません。

開業当初からの客 「俺が金あれば立て直してやるんだけど、金がないからできないよ。そう思っている人は何人もいるんだよ。残念だけど、しょうがない。良い思い出がいっぱい」

 湯船につかり、出会った仲間と語り合い、笑い合った日々…。

10年前からの常連客 「本当に…こういう施設はあるようでやっぱりない。ここ数年ありがとうございました」

 厚木健康センターの明かりは、まもなく消えます。

東名厚木健康センター 川口歩支配人 「28年あっという間です。きょうで最後の人もいたので良かった、会えて。本当にありがたい」

 多くの人に愛された場所は、これからも人々の記憶の中であたたかく生き続けます。