2022年に宮城県石巻市の障害者施設で、入浴の介助を受けていた女性が誤って高温の湯に入れられ大やけどを負って死亡しました。同じような事故が2度と起きてほしくないという遺族と、事故防止に向けた取り組みです。
阿部加奈さんの母親「お茶目さんかな。ただ本当に穏やかですね。写真見るとね、本当笑った写真しかないんです」
母親が語る阿部加奈さんは心身に重度の障害がありましたが、明るい性格だったということです。
加奈さんは2022年12月、石巻市の障害者支援施設ひたかみ園で職員の介助を受けて入浴した際に、全身の6割にも及ぶ大やけどをして3日後に亡くなりました。
阿部加奈さんの母親「言い方は悪いけど本当にマグロの赤身全部でしたからね。もう足見た時はもうこれ以上は見られないって感じで。ひどいやけどでしたね」
施設側の事故報告書によると、加奈さんを介助した職員は「40℃のお湯に入浴させた」と考えていましたが、実際のお湯の温度は50℃前後もありました。
お湯をかき混ぜないまま浮き型の温度計と手だけで温度を確認して入浴させてしまったことが、大やけどにつながりました。
阿部加奈さんの母親「親としては殺されたんだっていうイメージですかね。命を奪われた。だからいつも必ず恨み晴らすからね無念晴らすからねって。もうちょっと頑張ってね天国で笑顔でいてねっていう感じで毎朝拝んでますね」
加奈さんの遺族は、2025年2月に施設を告訴しました。警察は温度確認が不十分だったとして、20代と40代の女性職員と現場責任者の30代男性職員を、業務上過失致死の疑いで書類送検しました。
施設は事故後、お湯の温度を調整してから浴槽に入れるよう改修したほか、浴槽の中のお湯の温度がリアルタイムで分かるよう水温計を設置したということです。
この施設について加奈さんの母親は、事故前から職員の余裕の無さを感じていました。預けた荷物の中身を確認しなかったり、コミュニケーションが少なかったりしたためです。
阿部加奈さんの母親「あんまりね会話をしないですよね。ご苦労さんとかそういう言葉は一切ないですね。加奈ちゃん元気でしたよとかの言葉もなく、ただ車いすを置いて。人手不足もあるのかなと思いながらも、ただ預ける所そこしかないのでね」
施設側にも取材を申し込みましたが「刑事的な手続きが行われている最中」ということで応じてもらえませんでした。
介護現場などでのリスクマネジメントに詳しい東北福祉大学の菅原好秀教授は、この事故について施設側に余裕がなく職員の知識も不足していたのではないかと分析しています。
東北福祉大学総合福祉学部菅原好秀教授「老朽化のままでお金がない、人が集まらない、人件費が高騰している中で、それを変えようという意識がやはりまだ少ない。その中でこうした事故が起きたのではないか」
一方で、介護の業界ではこうした事故を防ごうと、技術革新が進んでいます。
仙台市宮城野区にある特別養護老人ホームでは、国の補助金を一部活用して2025年9月に最新の入浴機器を導入しました。
寝た状態でのミスト浴のため、利用者が溺れてしまうことを避けることができます。入浴を介助する際には、2人の職員が担当することにしています。
お湯の温度はあらかじめ別の機器で調整し、37℃から44℃の間でしか設定できません。万が一、温度が高いお湯などが機器に送られた際には、センサーが反応し自動的にストップします。更に、入浴前に職員が自分の手でお湯の温度をチェックしたり、入浴中に利用者の表情を確認したりして事故を防いでいます。
機器を導入したことで、利用者1人当たりの入浴時間が約10分間短縮され、その時間を余暇活動など利用者の満足度向上に充てられるようになりました。
特別養護老人ホームJ&B森健事務長「時間短縮できるというところで職員の気持ちの余裕だったり、そういうところが利用者さまの安心安全にはつながるんだろうなと思います」
菅原教授は、最新機器の導入などで職員に余裕を持たせた上で、最後は人が安全を確認する態勢をつくることが大事だと話します。
東北福祉大学総合福祉学部菅原好秀教授「ICTに任すことによって余裕が生まれると、色々な所に目が行くと思うんですね。色々と日常的な会話もするようになりますし。ICTを普及させつつ、あとは人ができることはできて最終的に確認するのは人という意識を持ち続けることが必要だと思います」
事故で亡くなった加奈さんの母親は今もなぜ事故が起きたのかその理由の解明と、2度と同じような事故が起きないことを願い続けています。
阿部加奈さんの母親「悲しさと寂しさっていうのは薄れることはないですね。だってね反抗もできないし言うこともできない子どもをあの方たちはしっかり、そういう職業についてる方たちなんですよね。とにかく悔しい。とにかく悔しいですね」