本土と島を結ぶ橋の開通から3年が経った、宮城県気仙沼市の大島。橋がもたらした観光業への影響と、これまで手付かずだった亀山リフトの再建への動きを取材しました。

 豊かな自然から緑の真珠と言われる気仙沼市の離島、大島。自然や三陸沖が一望できる亀山や、日本の海水浴場100選に選ばれている小田の浜海水浴場など観光名所が豊富です。
 2019年4月には、大島と本土を結ぶ全長356メートルの気仙沼大島大橋が開通。これまで船で25分かかっていた気仙沼市街地まで、車で15分ほどで行くことができるようになりました。

島と本土を結ぶ気仙沼大島大橋の開通から3年

気仙沼大島大橋

 開通に合わせ、橋のふもとの浦の浜地区には6つの店が入る商業施設、野杜海(のどか)がオープンしました。ここで、土産物や日用品などを扱う商店を営む、菅原弘さん(67)です。
 グリーンアイランド大島店主菅原弘さん「仙台から来る人たちとか岩手県の方から来る人たちも、一度橋を渡りたかったって。だから橋の効果というのは大きいと思います」
 父親の代から浦の浜地区で商店を営んでいた菅原さん。津波で店舗が流されましたが、野杜海で営業を再開しました。

 橋が開通した2019年は、年間67万人が大島を訪問。31万人だった2010年の2倍以上です。2020年以降は、新型コロナの影響で2019年の半分以下に落ち込みましたが、それでも2021年は震災前を8000人ほど上回り、橋の効果が表れています。
 しかし、橋が開通したことで、大島の観光業には新たに課題も生まれたと菅原さんは話します。

大橋開通による観光業への効果と課題

 グリーンアイランド大島店主菅原弘さん「降りないですぐそのまま車で来て、すぐそのまま帰って行くという人が多かったですね」
 本土へのアクセスが良くなったことで、大島に宿泊する人が減ってしまったのです。
 グリーンアイランド大島店主菅原弘さん「前は、船の時間が例えば午後6時半で終わりだった。そうした場合に夕方来て、すぐ帰るわけにはいかないから1泊しようっていうそういう人たちがだいぶいたんですよ」

新たな課題が

 大島の宿泊客は2010年が4万7000人だったのに対し、2019年は4万人、2020年は新型コロナの影響もあって2万人と減少しています。
 亀山のふもとにある休暇村気仙沼大島です。橋の開通に合わせ館内を改装しましたが、2020年度の宿泊客は過去最も少ない1万と伸び悩んでいます。地元の観光関係者は、橋の開通後の大島の課題として、観光客が長時間滞在したくなるような魅力が不足していることを挙げます。
 休暇村気仙沼大島営業課管理課米澤雄輔課長「以前からお見えになってた方は、子どものころにリフト乗ったことがあるよとか、そういった方もいらっしゃいます。今それがないことは、皆さん残念がられているような現状ですね」

被災した亀山リフトの再建に期待

 観光関係者が期待するのは、震災後11年間手付かずだった、市が運営する亀山リフトの再建です。
 亀山のふもとから山頂付近のレストハウスまでの903メートルを結んでいた、亀山リフト。1967年に開業し、多い時には年間12万6000人が利用していましたが、震災の津波と火災で被災しました。観光施設であることから、復興事業として国の交付金を使って再建することは認めらませんでした。更に、震災前は年間3000万円前後の赤字が続いていて、現在も再建には至っていません。
 グリーンアイランド大島店主菅原弘さん「自然だけでは駄目だっていうことですよ。長く観光客の方が滞在する。例えば、朝来てお昼食べていく時間くらいまでの何か観光の目玉になるものが必要だということです」

被災した亀山リフト

 地元から上がる再建への期待の声。これを受け、気仙沼市が模索しているのが。
 気仙沼市観光課畠山勉課長「今回、我々が目指しているのがモノレールになります」
 リフトの代わりに、亀山の中腹にある駐車場から山頂の展望台までの433メートルを、電動のモノレールで結ぶ計画です。
 リフトだと天候に左右され、年間180日くらいしか運行できませんでした。天候に影響されない上、距離を短くすることで建設費や運営費を削減できることからモノレールに注目したのです。
 気仙沼市観光課畠山勉課長「(モノレールは)よほどの悪天候でない限り、お客さまの要望があれば毎日運転することができるわけでございます。そうなれば、収益はリフトよりもやり方によっては上がるのではないかなと思います」

気仙沼大島 観光業復活の鍵

 目指すのは、公設民営です。地方創生の枠組みで、観光振興のための施設を整備する際に受けられる国の補助金を活用して、市がモノレールを整備、民間の事業者に運営を委託します。
 市の試算では、年間の運営費は人件費なども含めて2600万円。モノレールの往復の運賃を500円とすると、年間5万6000人の利用で採算が取れる計算です。
 気仙沼市観光課畠山勉課長「2022年度のどこかのタイミングで公募という形は取りたいと思います。令和6年度(2024年度)のなるべく早い時期に開業したいなと」

 観光復活の鍵を握る、亀山のモノレール構想。その行方が注目されます。
 気仙沼市観光課畠山勉課長「大島という立地的に一番先の方にある関係上、その途中の市内全域に及ぼす波及効果というのも相当大きいと思うんですよ。本市観光誘客の切り札になり得るものと思っております」